GR86/BRZ用 VERUS ENGINEERING Ventusエアロパッケージ1-3

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ヴェルスエンジニアリング VENTUS AERO PACKAGE 1–3

Ventusパッケージは、米Verus EngineeringがGR86/BRZのために開発した3段階のエアロキットです。実車の3Dスキャンから起こしたCFD解析、風洞実験、プロドライバーによる実走テストを重ねて設計されており、各部品の効果はすべて数値で公開されています。

このページでは、メーカー発行の技術資料(2025年9月版)に掲載されたデータと解析画像を、日本のユーザー向けに読み解いていきます。

フロントスプリッターの総ダウンフォース寄与36〜47%
同・ドラッグへの寄与約5%
トランスミッションカバーによるCd低減8ポイント
フードルーバーによる空力効率向上20ポイント
スワンネック化によるダウンフォース増(翼角−1°)+16.8%
Verus Engineering Ventusパッケージを装着したトヨタGR86
PHOTOVerus Engineering開発車両(GR86)。UCWスワンネックウイングとリアディフューザーを装着。
01

パッケージ構成

VENTUS 1

床下から始める

ストリート中心の方向け。車高もエンジンも純正のまま、床下の整流だけで純正比ドラッグ低減とダウンフォース追加を両立します。

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構成部品

  • ダイブプレーン(カナード)
  • トランスミッショントンネルカバー
  • アルミ製リアディフューザー
  • リアサスペンションカバー
Ventus 1のフロントビュー。ダイブプレーンを青色表示
FIG.03Aフロントビュー。バンパー両脇の青いパーツがダイブプレーン。外観の変化は最小限です。
Ventus 1の床下ビュー。装着部品を青色表示
FIG.03B床下ビュー。ディフューザー、トンネルカバー、サスペンションカバーと、床下が中心の構成です。

VENTUS 2

前後に翼を持つ

街乗りとサーキットを一台でこなす方向け。低ドラッグ志向の高効率ウイングとスプリッターで、日常域を犠牲にせず前後のダウンフォースを積み増します。

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構成部品

  • Ventus 1 の全部品
  • フロントスプリッター&エアダム
  • 高効率リアウイング(スワンネック)
  • リアスパッツ
Ventus 2のフロントビュー。スプリッターとウイングを青色表示
FIG.04Aフロントビュー。スプリッター&エアダムと高効率ウイングが加わり、前後で荷重を作る構成になります。
Ventus 2の床下ビュー。装着部品を青色表示
FIG.04B床下ビュー。Ventus 1の床下部品はそのままに、スプリッター下面という新しい負圧面が加わります。

VENTUS 3

タイムを削りにいく

競技・タイムアタック志向の方向け。UCWウイングを軸に、サイドスプリッターやフードルーバーまで含めた最大構成です。ウイングマウントはボトム/スワンネックの2仕様。

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構成部品

  • Ventus 2 の全部品(ウイング以外)
  • UCWリアウイング(ボトム/スワンネック)
  • スプリッターエンドプレート
  • サイドスプリッター
  • フードルーバー
  • ベンテッドエンドプレート

※ベンテッドエンドプレートはスワンネック仕様のオプションです。

Ventus 3のフロントビュー。全エアロパーツを青色表示
FIG.05Aフロントビュー(スワンネック仕様)。スプリッター、サイドスプリッター、フードルーバー、UCWウイングが確認できます。
Ventus 3の床下ビュー。装着部品を青色表示
FIG.05B床下ビュー。床下・前後の翼・側面まで、車体全体で空力を作る最大構成です。
02

構成一覧

部品 VENTUS 1 VENTUS 2 VENTUS 3
ダイブプレーン(カナード)
トランスミッショントンネルカバー
アルミ製リアディフューザー
リアサスペンションカバー
フロントスプリッター&エアダム
リアスパッツ
高効率リアウイング
UCWリアウイング
スプリッターエンドプレート
サイドスプリッター
フードルーバー
ベンテッドエンドプレート OPTION

各部品は単品でも装着できますが、前後の空力バランスを崩さないため、メーカーはパッケージ単位での導入を推奨しています。解析はローダウンスプリング/車高調相当の車高で行われています。

03

データで見る効果

下のグラフは、各パッケージが純正(OEM)と比べてどれだけダウンフォース(上段)とドラッグ(下段)を増減させるかを、対気速度ごとに示したものです。空力の力は速度の2乗に比例して増えるため、曲線は右肩上がりのカーブを描きます。

注目してほしいのは下段のVentus 1(黒線)。曲線がゼロより下、つまり純正よりも空気抵抗が減っていることを示します。床下の整流だけで構成されたパッケージならではの特性です。

Ventus 2〜3の帯は、ウイング角度の調整範囲による幅を表しています。たとえば時速160km付近では、Ventus 3(スワンネック)は数百lbs(数十〜百数十kg)級のダウンフォースを純正比で上乗せします。

Ventusパッケージ別のダウンフォースとドラッグの速度特性グラフ
FIG.02純正比のダウンフォース増分(上)とドラッグ増分(下)。横軸は対気速度[mph]、縦軸は力[lbs]。1 lbs≒0.45kg、100mph≒161km/h。

ボトムマウントとスワンネックの違い — Ventus 3のUCWウイングは2種類のマウントが選べます。ウイングの仕事の大半は下面(負圧面)が担うため、下面を支柱で乱さないスワンネックの方が効率的。翼角を立てた状態では、ドラッグを増やさずにダウンフォースだけを上乗せできます(80mph≒129km/h時)。

ウイング翼角 ダウンフォース ドラッグ
−1°(低翼角) +16.8% +2.9%
12°(高翼角) +6.8% −0.4%

スワンネック化による変化(ボトムマウント比・車両全体)。

04

部品ごとの解説

4.1ダイブプレーン(カナード)V1/V2/V3+

最低地上高を変えずにフロントのダウンフォースを少し足したい、という場合に向く部品です。板そのものが空気を受けて発生する力は限られており、本来の仕事は車体まわりの流れを整えること。意図的に作り出した渦がフェンダー内の空気を抜き、ボディに働くリフトを減らします。

ダイブプレーン周りの気流を可視化したCFD画像
FIG.06ダイブプレーンを通過する気流(ストリームライン)。色は流速で、暖色ほど速い流れ。プレーンが作る渦がフェンダー内の空気を引き抜く様子を示しています。
素材 2×2ツイルカーボン(クリアコート仕上げ) 取付 位置決めテンプレート付属
4.2リアディフューザー&サスペンションカバーV1/V2/V3+

市販車の空気抵抗の多くは、車体後方にできる低圧の渦(ウェイク)が車を後ろへ引っ張る「圧力抵抗」です。ディフューザーは床下の空気を減速させながら後方へ導き、この渦を埋めます。結果として、ダウンフォースを得ながらドラッグも下がる。じつはストリートカーにこそ向いた部品です。

リアディフューザーが後方の気流を整える様子を上から見たCFD画像
FIG.07床下を真上から見た図。水色がディフューザー面で、床下から出た流れが車体後方のウェイク領域へ流れ込み、渦を埋めていることが読み取れます。
素材 シートアルミ 取付 シャシー・バンパー複数箇所に固定
4.3トランスミッショントンネルカバーV1/V2/V3+

純正の床下には大きな開口部が残っています。ここを2枚のパネルで塞ぐことで床下の乱流が減り、CFD上でCd(抗力係数)を約8ポイント低減。エンジンルームから抜けてくる空気をパネル上面に流すことでダウンフォースも増え、後方のディフューザーに届く気流もきれいになります。

素材 シートアルミ 取付 純正ボルト穴+リベットナット(要施工)
4.4フロントスプリッター&エアダムV2/V3+

前まわりの主役です。総ダウンフォースの36〜47%を受け持ちながら、ドラッグへの寄与は全体の約5%(Ventus 2、ウイング角度により変動)。解析はスプリッター単体ではなく、エアダム・サポートロッドまで含めた実装状態で行われています。

Ventus 3で追加されるエンドプレートは、スプリッター上下面の働きを高めて空力バランスを前寄りに移します。その分リアウイングの角度を立てられるため、同じバランスのままトータルのダウンフォースを増やせます。

フロントスプリッター下面の圧力分布を示すCFD画像
FIG.08床下前方の圧力分布(CpZ)。スプリッター下面が濃い青=強いダウンフォース発生域になっているのが分かります。
素材 硬質樹脂
4.5サイドスプリッターV3+

車体側面から床下へ回り込む空気を抑える部品です。開発では実際のサーキット走行(Putnam Park)で記録された車高と舵角をCFDで再現し、直進時だけでなく旋回中の床下気流を重視して形状を決めています。増えるダウンフォースは車体中央付近に集中するため、前後バランスへの影響はわずかです。

素材 硬質樹脂 取付 純正サイドスカート部へリベットナット固定
4.6高効率リアウイングV2+

「街も走るがサーキットも走る」という使い方を想定して、CFDの反復最適化で生まれたウイングです。低ドラッグなので、パワーの限られた車両や小さめのスプリッターとの相性が良好。純正のダックテールスポイラーを残したまま、その上で効率よく働くよう位置決めされています。ドラッグ最小を狙った設計のため、マウントはスワンネックのみです。

リアウイング下面の圧力分布を後方から見たCFD画像
FIG.09後方から見たウイングの圧力分布。下面(負圧面)が青く染まっており、ここがダウンフォースの主発生源であることを示します。
素材 2×2ツイル・プリプレグカーボン 取付 トランク構造部へボルト留め
4.7UCWリアウイングV3+

リアに大きなダウンフォースが欲しい場合はこちら。翼型はCFDで設計したのち風洞で煮詰めたもので、こちらも純正スポイラーとの共存が前提です。マウントはボトムとスワンネックの2種。効率差の数値は「03 データで見る効果」の表をご覧ください。

素材 2×2ツイル・プリプレグカーボン 取付 トランク構造部へボルト留め オプション ベンテッドエンドプレート(スワンネック)
4.8フードルーバーV3+

ラジエーターとエンジンルームの熱気をボンネット上へ抜く部品です。ダウンフォース増とドラッグ減を同時に達成し、車両全体の空力効率は20ポイント向上。バランスは5%ほど前寄りに動きます。抜いた空気がリアウイングの働きを妨げないよう、開口の位置と形が調整されています。

フードルーバーからの排気流を可視化したCFD画像
FIG.10総圧(CpT)の可視化。ボンネット開口から抜けた低エネルギーの空気(マゼンタ)が、リアウイングを避けるように車体上面を流れていく様子です。
素材 熱成形ABS樹脂
05

CFD画像の読み方

本ページやメーカー資料に登場する解析画像は、色の意味が分かると一気に読めるようになります。主な可視化手法をまとめました。

STREAMLINEストリームライン(流線)

空気の通り道を線で表したもの。色は流速を示し、赤系が速く、青系が遅い流れです。FIG.06のように、部品が流れをどこへ導いているかを読むのに使います。

CpZ上下方向の圧力分布

車体表面のどこがダウンフォース/リフトを生んでいるかを示します。青=ダウンフォース発生域、赤=リフト発生域。FIG.08・09の「青く染まった面」が仕事をしている場所です。

CpX前後方向の圧力分布

ドラッグ(抵抗)がどこで発生しているかの可視化。赤が抵抗を生む場所、青は逆に車を前へ押す(推力側の)場所を表します。

CpT総圧(気流のエネルギー)

気流が持つエネルギーの残量。エンジンルームや車体を通過してエネルギーを失った空気の行き先を追うのに使います(FIG.10)。

Cp圧力係数

大気圧を0とした相対圧力。0より下が低圧(吸われる側)、上が高圧(押される側)です。無次元数なので速度が変わっても比較できます。

POINTSポイント

空力係数の増減を表す単位で、1ポイント=係数0.001。「Cd8ポイント低減」は抗力係数が0.008下がったという意味です。

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開発の裏付け

実車スキャンから作られた解析モデル

解析は入力が悪ければ結果も悪くなります。Verusは GR86 の実車を自社で3Dスキャンし、誤差が最も大きい箇所でも1mm未満というCADモデルを製作。ダクトやラジエーター経路、エンジンルームの主要構成部品まで解析モデルに含めています。

3DスキャンデータとCADモデルの照合画像
FIG.11スキャンデータ(青)とCADモデル(グレー)の重ね合わせ。青とグレーがまだらに見えるのは両者の差がごく小さい証拠です。

「直進」を前提にしないCFD

解析には有限体積法CFDのOpenFOAM v2106(SIMPLE法、K-Omega SST乱流モデル)を使用。現実の走行でほぼ起こらない完全な直進気流ではなく、0.5°のヨー角を基本条件とし、複数の車高・ヨーレートで旋回状態も解析しています。ラジエーター等の冷却系は多孔質流体としてモデル化されています。

風洞と実走で確認してから製品化

CFDで設計した形状は風洞実験で熟成させ、最終的にプロドライバーのサーキット実走で確認。仕上げは純正並みのフィット感を目指しており、取付動画とマニュアルが用意されています。エンジンに手を入れないため、駆動系の純正保証はそのまま残ります。

どのパッケージにするか迷ったら

走行ステージ(街乗り中心か、走行会か、タイムアタックか)と現在の仕様をお知らせいただければ、上記のデータをもとに構成をご提案します。単品からの段階的な導入のご相談も可能です。

適合:トヨタ GR86(ZN8)/スバル BRZ(ZD8)。本ページの図版・数値はVerus Engineering発行「Ventus 1-3 Informative Pack」v3.1(2025年9月29日)より。解説は同資料に基づきRK-ONLINEが構成・翻訳したものです。