WRX/STI(VA) VERUS ENGINEERING Ventusエアロ解説
RK-ONLINE / VERUS ENGINEERING FOR SUBARU WRX / WRX STI (VA)
ヴェルスエンジニアリング VENTUS AERO PACKAGE 1–3
Ventusパッケージは、米Verus EngineeringがVA型WRX/WRX STIのために開発した3段階のエアロキットです。フルカーCFD解析に風洞実験、プロドライバーによる実走テストを重ねて設計されており、ドラッグの増加を最小限に抑えながらダウンフォースを積み増す「効率」を最優先にしています。
このページでは、メーカー発行の技術資料(2020年2月版)に掲載されたデータと解析画像を、日本のユーザー向けに読み解いていきます。
パッケージ構成
構成部品
- ダイブプレーン(カナード)
- リアディフューザー
- リアサスペンションカバー
構成部品
- Ventus 1 の全部品
- フロントスプリッター
- サイドスプリッター
構成部品
- Ventus 2 の全部品
- UCWリアウイング
※ウイング翼角は0°〜15°の範囲でデータが公開されており、前後バランスを好みに合わせて調整できます。
構成一覧
| 部品 | VENTUS 1 | VENTUS 2 | VENTUS 3 |
|---|---|---|---|
| ダイブプレーン(カナード) | ● | ● | ● |
| リアディフューザー | ● | ● | ● |
| リアサスペンションカバー | ● | ● | ● |
| フロントスプリッター | - | ● | ● |
| サイドスプリッター | - | ● | ● |
| UCWリアウイング | - | - | ● |
各部品は単品でも装着できますが、前後の空力バランスを崩さず最大の効果を得るには、パッケージ単位での導入が最良とメーカーは案内しています。
データで見る効果
下のグラフは、各パッケージが純正VA WRXと比べてどれだけダウンフォース(太線)とドラッグ(マーカー付き線)を増減させるかを、対気速度ごとに示したものです。空力の力は速度の2乗に比例して増えるため、曲線は右肩上がりのカーブを描きます。
注目してほしいのはVentus 1(えんじ)とVentus 2(青)のドラッグ線。どちらもゼロより下=純正よりも空気抵抗が減っています。ダウンフォースを足しながら抵抗を減らす、床下整流ならではの特性です。
Ventus 3(グレー)はUCWウイングの追加で荷重が一気に伸びます。ドラッグは増加に転じますが、得られるダウンフォースに対してひと桁小さい増加に収まっています(グラフは翼角13°)。
ウイング翼角ごとの特性も公開されています — UCWリアウイング単体の発生荷重は、翼角0°〜15°まで2°刻みで計測・公開されています。翼角を立てるほどダウンフォース(マーカー付きの太線)は大きく伸びる一方、ドラッグ(細線)の増加は緩やか。前後バランスの微調整に使える実用的なデータです。
部品ごとの解説
4.1リアディフューザー&サスペンションカバーV1/V2/V3+
Verusの代名詞とも言える2段スロート構造のディフューザーです。下面に低圧を作って荷重を稼ぐと同時に、市販車のドラッグの主因である「車体後方の低圧の渦(ウェイク)」に床下の空気を送り込んで埋めることで、ダウンフォース(安定性)を増やしながら全体のドラッグを下げます。じつはストリートカーにこそ向いた部品です。
表面だけを見るとディフューザー自体は抵抗(誘導抵抗)を出しているように見えますが、ウェイクを埋める効果がそれを上回る、というのがCFDで確認されたポイントです。
4.2フロントスプリッターV2/V3+
フロントの荷重を大きく増やすための部品です。平らな板に見えますが、路面との間で働くグラウンドエフェクトにより大きな前荷重を発生します。エアダムや取付具まで含めたassy全体で解析されており、その空力効率(揚抗比L/D)は14。ダウンフォースを作る部品として効率の良い部類です。
前縁で発生した渦が外側後方へ流れながら大きな低圧域を作り、これが荷重の源になります。スプリッター中央部では流れがきれいに付着していることもCFDで確認されています。
4.3ダイブプレーン(カナード)V1/V2/V3+
「板が空気を受けて荷重を作る部品」と思われがちですが、Verusの設計思想は一歩先にあります。プレーン自体の上面高圧・下面低圧による荷重はごく一部。主な仕事は、意図的に作り出した渦でフェンダー内の空気を引き抜き、ボディに働くリフトを減らすことです。位置と角度が性能を左右するため、専用の位置決めテンプレートが付属します。
4.4UCWリアウイングV3+
VA型用のUCWウイングは、高めのダウンフォース帯を狙って開発された仕様です。翼型はCFDで最適化した後、風洞で熟成させ、最終確認はサーキットでの実走テスト。仕事のほとんどは下面が担います。下面のCpは−1を下回る強い低圧で車体後部を路面へ引き付け、上面のCpは最大でも0.6程度。つまり下面は上面よりはるかに強く働いています。
下面側の流速が上面より速いことが、この圧力差の正体です。ウイングは同時に、車体後方で下向きに巻き上がろうとする全体の流れを真後ろへ向け直す役割も果たします。
4.5サイドスプリッターV2/V3+
車体上面側の空気が側面から床下へ回り込むのを抑える部品です。効果はダウンフォース+7ポイント、ドラッグ増ゼロ。ヨー角が付いた(=コーナリング中の)状態ではさらに効きが良くなります。荷重は車体中央に加わるため、前後の空力バランスを崩しません。
CFD画像の読み方
本ページやメーカー資料に登場する解析画像は、色の意味が分かると一気に読めるようになります。主な可視化手法をまとめました。
STREAMLINEストリームライン(流線)
空気の通り道を線で表したもの。色は流速を示し、赤系が速く、青系が遅い流れです。FIG.01・11のように、部品が流れをどこへ導いているかを読むのに使います。
Cp圧力係数
大気圧を0とした相対圧力。0より下が低圧(吸われる側)、上が高圧(押される側)です。無次元数なので速度が変わっても比較できます(FIG.07・13)。
CpX前後方向の圧力分布
ドラッグ(抵抗)がどこで発生しているかの可視化。赤が抵抗を生む場所、青は逆に車を前へ押す(推力側の)場所を表します。
CpZ上下方向の圧力分布
車体表面のどこがダウンフォース/リフトを生んでいるかを示します。青=ダウンフォース発生域、赤=リフト発生域です。
CpT / LIC総圧とオイル流プロット
CpTは気流のエネルギー残量で、ウェイク領域の可視化に使います(FIG.08)。LICは表面の「オイル流」を再現したもので、流れの付着や剥離を読むのに最適です(FIG.09・10)。
POINTSポイント
空力係数の増減を表す単位で、1ポイント=係数0.001。「ダウンフォース7ポイント追加」は揚力係数が0.007改善したという意味です。
開発の裏付け
「直進」を前提にしないフルカーCFD
解析には有限体積法CFDのOpenFOAM V6(SIMPLE法、K-Omega SST乱流モデル)を使用。境界条件は自動車空力の標準的な構成で、車両全体を丸ごと解析しています。現実の走行でほぼ起こらない完全な直進気流ではなく、0.5°のヨー角を付けた条件を基本としているのが特徴です。
風洞と実走で確認してから製品化
パッケージのR&Dは、CFDに加えて風洞実験、プロドライバーによるサーキット実走テスト、そして過去の車種開発で実証済みの設計手法の組み合わせで行われています。ラップタイム短縮を目的に、機能するエアロパーツだけで構成されています。
純正ライクなフィットと保証
各部品は純正同等のフィット感を狙って設計されており、エンジンに手を入れないため車両の純正保証はそのまま残ります。単品導入も可能ですが、前後バランスの観点からパッケージでの導入が最も効果的です。
どのパッケージにするか迷ったら
走行ステージ(街乗り中心か、走行会か、タイムアタックか)と現在の仕様をお知らせいただければ、上記のデータをもとに構成をご提案します。単品からの段階的な導入のご相談も可能です。
適合:スバル WRX/WRX STI(VA型)。本ページの図版・数値はVerus Engineering発行「Performance of Verus Engineering Ventus Packages — Subaru VA WRX / STI Platform」(2020年2月4日版)より。解説は同資料に基づきRK-ONLINEが構成・翻訳したものです。