WRX STI(GRB/GVB) VERUS ENGINEERING Ventusエアロ解説

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WRX STI(GRB/GVB) VERUS ENGINEERING Ventusエアロ解説

  • 対応SUBARU WRX/WRX STI 2007〜2014(GR/GV系)
  • 出典VERUS「Performance of Verus Engineering Ventus Packages — Subaru WRX/STI 2007-2014」(2020年2月)

Ventusパッケージは、米VERUS Engineeringが2007〜2014年型WRX/STI(GR/GV系)用に開発した2段階のエアロキットです。フルカーCFD解析と、過去の開発で実証済みの設計手法をもとに、ドラッグの増加を抑えながらダウンフォースを増やす「効率」を最優先に設計されています。

このページでは、メーカー発行の技術資料(2020年2月版)に載っているデータと解析画像を、当店で日本語に訳して解説します。

主な数値(メーカー資料より) 値
フロントスプリッターassyの空力効率(L/D) 72
サイドスプリッターによるダウンフォース追加 +7ポイント
サイドスプリッターによるドラッグ増加 ゼロ
UCWリアウイングの翼角データ公開範囲 0°〜15°
CFD解析ソルバー OpenFOAM V6
Ventusパッケージを装着したGR系WRX STIのCADレンダリング
開発用CADモデル(GR系STI)。青色がVentusの構成部品で、UCWリアウイング、フロントスプリッター、ダイブプレーン、サイドスプリッターが見えます。

パッケージ構成

Ventus 1(ストリート中心の方向け)

ウイングもスプリッターも付けず、床下と側面の整流だけで安定性(ダウンフォース)を足す構成です。

  • ダイブプレーン(カナード)
  • リアディフューザー&サスペンションカバー
  • サイドスプリッター
Ventus構成部品を青色表示したGR系STIの側面ビュー
図4A 側面(全部品装着状態)。フェンダー脇のダイブプレーン、サイドシル下のサイドスプリッター、リアのディフューザーがVentus 1です。トランク上のウイングはVentus 2の部品です。

Ventus 2(サーキットでタイムを狙う方向け)

Ventus 1にフロントスプリッターとUCWリアウイングを加え、前後で大きな荷重を作るフル構成です。

  • Ventus 1の全部品
  • フロントスプリッター
  • UCWリアウイング
Ventus 2の床下ビュー。スプリッター、サイドスプリッター、ディフューザーを青色表示
図4B 床下。前端のスプリッター(V2)から、サイドスプリッター、リアディフューザー(いずれもV1)まで、床下の流れを一続きで整えます。
Ventus 2のリアビュー。UCWウイングとディフューザーを青色表示
図4C リア。UCWリアウイング(V2)と、ディフューザー、サイドスプリッター(V1)。ハッチバック(GR)とセダン(GV)の両方に設定があります。

WRX(GR/GV)用VERUSパーツ一覧を見る

構成一覧

部品 Ventus 1 Ventus 2
ダイブプレーン(カナード) ● ●
リアディフューザー&サスペンションカバー ● ●
サイドスプリッター ● ●
フロントスプリッター - ●
UCWリアウイング - ●

各部品は単品でも装着できますが、前後の空力バランスを崩さずに効果を出すには、パッケージ単位での導入が最良とメーカーは案内しています。

データで見る効果

下のグラフは、各パッケージが純正STI(純正車高)と比べてダウンフォース(青線)とドラッグ(黒線)をどれだけ増やすかを、速度ごとに示したものです。空力の力は速度の2乗に比例して増えるので、曲線は右に行くほど上がります。

どちらのパッケージも、得られる荷重に比べてドラッグの増加はひと桁小さくなっています。VERUSが「効率の良いダウンフォース」と呼んでいるのはこの点です。

Ventus 2の値はウイング翼角10°での計測です。翼角を寝かせればドラッグを抑える方向、立てれば荷重を増やす方向に調整できます。

Ventusパッケージ別のダウンフォースとドラッグの速度特性グラフ
図2 純正STI比のダウンフォース増分(青)とドラッグ増分(黒)。丸がVentus 1、三角がVentus 2(翼角10°)。横軸は速度[mph]、縦軸は力[lbs]。1lbs≒0.45kg、100mph≒161km/h。

ウイング翼角ごとの特性

UCWリアウイング単体の発生荷重は、翼角0°〜15°まで2°刻みで計測され、公開されています。翼角を立てるほどダウンフォース(マーカー付きの太線)は大きく伸び、ドラッグ(細線)の増え方は緩やかです。セッティングの幅が広いウイングです。

UCWウイングの翼角別ダウンフォース・ドラッグ特性グラフ
図3 UCWウイング単体の翼角別特性(0°〜15°)。太線がダウンフォース、細線がドラッグで、同じ色が同じ翼角です。

部品ごとの解説

リアディフューザー&サスペンションカバー Ventus 1・2

VERUSの代表的な部品である、2段スロート構造のディフューザーです。下面に低圧を作って荷重を得ると同時に、市販車のドラッグの主な原因である車体後方の低圧の渦(ウェイク)に床下の空気を送り込んで埋めます。きちんと設計すれば、ダウンフォースを増やしながら全体のドラッグを下げられます。安定性が増すため、街乗り中心の車にも向いています。

ディフューザーの表面だけを見ると抵抗(誘導抵抗)を出しているように見えますが、ウェイクを埋める効果のほうが大きいことがCFDで確認されています。

床下の圧力分布を示すCFD画像
図5 床下の圧力分布(Cp)。ディフューザー入口の濃い青が低圧、つまり荷重の発生域です。前輪前の赤はタイヤに当たる高圧です。
車体後方のウェイク領域を可視化したCFD画像
図6 総圧(CpT)で見たウェイク領域。車体後方の青緑の塊が車を後ろへ引っ張る低エネルギー域で、これが小さいほどドラッグは減ります。
ディフューザー表面の流れを示すLICプロット
図7 床下後半のLICプロット(表面のオイル流の可視化)。ディフューザー外側のセクションでは流れがきれいに付着しています。中央は排気系の影響で乱れた流れになりますが、性能の低下を意味するものではありません。

構造:メイン+セカンドの2段スロート

フロントスプリッター Ventus 2

フロントの荷重を大きく増やすための部品です。平らな板に見えますが、路面との間で働くグラウンドエフェクトによって大きな前荷重を生みます。エアダムや取付具まで含めたassy全体で解析されており、空力効率(揚抗比L/D)は72です。空力デバイスとしては効率の高い部類に入ります。

前縁で生まれた渦が外側後方へ流れながら大きな低圧域を作り、これが荷重のもとになります。スプリッター外側の端で流れがきれいに付着していることも、CFDで確認されています。

スプリッター下面の渦の筋を示すLICプロット
図8 床下全体のLICプロット(左が車体前方)。スプリッター下面に、前縁から外側後方へ走る渦の筋が見えます。この渦が作る低圧がダウンフォースを生みます。

ダイブプレーン(カナード) Ventus 1・2

板が空気を受けて荷重を作る部品と思われがちですが、プレーン自体の上面の高圧と下面の低圧による荷重はごく一部です。主な役割は、意図的に作る渦でフェンダー内の空気を引き抜き、ボディに働くリフトを減らすことです。位置と角度で性能が変わるため、専用の位置決めテンプレートが付属します。

ダイブプレーンが作る渦を可視化したCFD画像
図9 ダイブプレーンを通った流れ(流線)。バンパー脇で生まれた渦が、フェンダーとホイールハウスの空気を巻き込みながら後方へ抜けていきます。

取付:位置決めテンプレート付属

UCWリアウイング Ventus 2

GR/GV系STI用のUCWウイングは、中程度のダウンフォース域を狙い、最適化ソフトウェアで翼型を設計したモデルです。働きの大半は下面が担います。下面のCpは−1を下回る強い低圧で車体後部を路面へ引き付け、上面のCpは最大でも0.6程度です。下面のほうが上面よりはるかに大きく働いていることになります。

この圧力差は、下面側の流速が上面より速いことから生まれます。ウイングは同時に、車体後方で下向きに巻き上がろうとする流れを真後ろへ向け直す役割も持っています。

ウイング上面の圧力分布を示すCFD画像
図10 前方から見た圧力分布(Cp)。ウイング上面が赤(高圧)になっており、翼を上から押し下げています。
ウイング後方の気流を側面から見たCFD画像
図11 側面から見た流線。ルーフを越えた流れがウイングで向きを変え、後方へまっすぐ抜けています。

サイドスプリッター Ventus 1・2

車体上面側の空気が側面から床下へ回り込むのを抑える部品です。効果はダウンフォース+7ポイント、ドラッグの増加はゼロです。ヨー角が付いた状態(コーナリング中)では、さらに効きが良くなります。荷重は車体中央にかかるため、前後の空力バランスは崩れません。

車体表面の圧力分布を斜め前から見たCFD画像
図12 斜め前から見た圧力分布(Cp)。サイドシルの下端に沿って圧力の境目ができており、上面側の高圧と床下の低圧をサイドスプリッターが仕切っています。

効果:ダウンフォース+7ポイント/ドラッグ増ゼロ(ヨー角付きでさらに向上)

CFD画像の読み方

このページやメーカー資料に出てくる解析画像は、色の意味を知っておくと読みやすくなります。主な表示方法は次のとおりです。

ストリームライン(流線) 空気の通り道を線で表したもの。色は流速で、赤系が速く、青系が遅い流れです。図9・図11のように、部品が流れをどこへ導いているかを見るのに使います。
Cp(圧力係数) 大気圧を0とした相対的な圧力です。0より下が低圧(吸われる側)、上が高圧(押される側)。単位のない数なので、速度が変わっても比べられます(図5・図10・図12)。
CpX(前後方向の圧力分布) ドラッグがどこで発生しているかを示します。赤が抵抗を生む場所、青が車を前へ押す側の場所です。
CpZ(上下方向の圧力分布) 車体のどこでダウンフォースやリフトが生まれているかを示します。青がダウンフォース、赤がリフトの発生域です。
CpT(総圧)/LIC CpTは気流に残っているエネルギーの量で、ウェイク領域を見るのに使います(図6)。LICは表面のオイル流を再現したもので、流れの付着や剥離を見るのに向いています(図7・図8)。
ポイント 空力係数の増減を表す単位で、1ポイントは係数0.001です。「ダウンフォース7ポイント追加」は揚力係数が0.007改善したという意味です。

開発の裏付け

直進だけを前提にしないフルカーCFD

解析には有限体積法CFDのOpenFOAM V6(SIMPLE法、K-Omega SST乱流モデル)を使っています。境界条件は自動車空力で標準的な構成で、車両全体をまるごと解析しています。実際の走行ではほぼ起こらない完全な直進状態ではなく、0.5°のヨー角を付けた条件を基本にしています。

フルカーCFDの気流を側面から可視化した画像
図13 フルカー解析の流線。床下を抜けた流れとウイング後方の流れが車体後方で合流する様子まで、車両全体を再現しています。

実証済みの設計をもとに開発

このパッケージの開発は、最新のCFD技術と、VERUSが過去の車種開発で実証してきた設計手法を組み合わせて行われています。ラップタイム短縮を目的に、機能するエアロパーツだけで構成しています。

純正に近いフィットと保証

各部品は純正同等のフィットを目標に設計されています。エンジンには手を入れないため、車両のメーカー保証はそのまま残ります。単品でも導入できますが、前後バランスの面からはパッケージでの導入が最も効果的です。

構成のご相談

走り方(街乗り中心、走行会、タイムアタック)と現在の仕様をお知らせいただければ、上のデータをもとに構成をご提案します。GR(ハッチバック)、GV(セダン)のどちらでもご相談ください。


適合:スバル WRX/WRX STI 2007〜2014(GR/GV系)。図版と数値はVERUS Engineering発行「Performance of Verus Engineering Ventus Packages — Subaru WRX/STI 2007-2014」(2020年2月4日版)によるもので、解説は同資料をもとにRK-ONLINEが構成・翻訳しました。