GRカローラ VERUS ENGINEERING Ventusエアロ解説

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GRカローラ VERUS ENGINEERING Ventusエアロ解説

  • 対応TOYOTA GRカローラ
  • 出典VERUS「Performance of Verus Engineering Ventus Packages — Toyota GR Corolla Platform」(2023年11月)

Ventusパッケージは、米VERUS EngineeringがトヨタGRカローラ用に開発した2段階のエアロキットです。実車の3DスキャンをもとにしたモデルでのCFD解析に、風洞や実走テストで得た知見を加えて設計されています。

GRカローラ用は、大型ウイングを使わず、床下と車体下まわりの整流でダウンフォースを増やす構成です。普段の使い勝手と外観を大きく変えずに、高速域の安定感を高めます。このページでは、メーカー発行の技術資料(2023年11月版)に載っているデータと解析画像を、当店で日本語に訳して解説します。

主な数値(メーカー資料より) 値
Ventus 2のダウンフォース増(160km/h付近、純正比) 約190lbs(約85kg)
Ventus 2のドラッグ増(320km/h時でも) 10lbs前後
リアディフューザーの素材 シートアルミ
解析モデルのスキャン誤差(最大部) 1mm未満
CFDソルバー OpenFOAM v2106
VERUS Engineering Ventusパッケージを装着したトヨタGRカローラのCFD解析レンダリング
図1 GRカローラ解析モデルの流線。色は流速で、暖色ほど速い流れです。ルーフ上で加速し、床下と車体後方で減速しています。

パッケージ構成

Ventus 1(ストリート中心の方向け)

ダイブプレーンとリアディフューザーの2点で、外観の変化を小さく抑えながら前後にダウンフォースを足す構成です。

  • ダイブプレーン(カナード)
  • アルミ製リアディフューザー
Ventus 1のフロントビュー。ダイブプレーンを青色表示
図3A フロント。バンパー両脇の青い部品がダイブプレーンで、外観の変化はわずかです。
Ventus 1のリアビュー。リアディフューザーを青色表示
図3B リア。リアバンパーの下に収まるディフューザーです。3本出しマフラーを避けたストレーキ配置になっています。

Ventus 2(サーキットも走る方向け)

スプリッター、サイドスプリッター、リアスパッツを加え、車体の下まわり全周で空気の流れを整える構成です。

  • Ventus 1の全部品
  • フロントスプリッター
  • サイドスプリッター
  • リアスパッツ
Ventus 2のフロントビュー。装着部品を青色表示
図4A フロント。サポートロッド付きのスプリッターと、ロッカー部に沿うサイドスプリッターが加わります。
Ventus 2のリアビュー。装着部品を青色表示
図4B リア。ディフューザーに加え、リアタイヤ前方のスパッツとサイドスプリッターで床下後半の流れを整えます。

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構成一覧

部品 Ventus 1 Ventus 2
ダイブプレーン(カナード) ● ●
アルミ製リアディフューザー ● ●
フロントスプリッター - ●
サイドスプリッター - ●
リアスパッツ - ●

各部品は単品でも装着できますが、前後の空力バランスを崩さないよう、メーカーはパッケージ単位での導入を推奨しています。

データで見る効果

下のグラフは、各パッケージが純正(OEM)のGRカローラと比べてダウンフォース(上段)とドラッグ(下段)をどれだけ増やすかを、速度ごとに示したものです。空力の力は速度の2乗に比例して増えるので、曲線は右に行くほど上がります。

下段のドラッグは、縦軸の目盛りが上段の1/16しかなく、最高速域でも増加は10lbs前後に収まっています。ウイングを持たず、床下の整流を中心にした構成のため、ドラッグをほとんど増やさずにダウンフォースを得られます。

時速160km(100mph)付近では、Ventus 2は純正比で約190lbs(約85kg)のダウンフォースを上乗せします。

Ventusパッケージ別のダウンフォースとドラッグの速度特性グラフ
図2 純正比のダウンフォース増分(上)とドラッグ増分(下)。紫線がVentus 1、青線がVentus 2。横軸は速度[mph]、縦軸は力[lbs]。1lbs≒0.45kg、100mph≒161km/h。角度調整式のウイングがないため、他車種のような調整幅の帯ではなく1本の線で示されています。

部品ごとの解説

ダイブプレーン(カナード) Ventus 1・2

最低地上高を変えずに、フロントのダウンフォースを少し足したいときに向く部品です。板そのものが受ける力(上面が高圧、下面が低圧)は大きくなく、主な役割は車体まわりの流れを整えることです。意図的に作る渦がフェンダー内の空気を引き抜き、ボディに働くリフトを減らします。

GRカローラ前まわりの気流を可視化したCFD画像
図5 前まわりの流線(色は流速)。バンパー脇を通った流れがダイブプレーンで向きを変え、前輪まわりの空気を後方へ引き抜いています。

素材:2×2ツイルカーボン(クリアコート仕上げ)/取付:位置決めテンプレート付属

アルミ製リアディフューザー Ventus 1・2

効率よくダウンフォースを得るための中心となる部品です。市販車の空気抵抗の多くは、車体の後ろにできる低圧の渦(ウェイク)が車を後ろへ引っ張る「圧力抵抗」です。ディフューザーは下面に低圧を作ってダウンフォースを生むと同時に、床下の流れを後方の渦に流し込んで埋めるため、ダウンフォースを増やしながらドラッグを減らせます。正しく設計されたディフューザーが街乗り中心の車にも向くのはこのためです。

車体後方のウェイク領域とディフューザーからの気流を示すCFD画像
図6 車体後方の流線。バンパーの後ろで渦を巻く遅い流れ(紺)に、ディフューザーを出た床下の流れが流れ込み、ウェイクを埋めています。
床下後方の圧力分布を示すCFD画像
図7 床下後方を真下から見た圧力分布。ディフューザー面が青(低圧、ダウンフォースの発生域)になっています。赤い部分はリアタイヤ前の、流れがよどむ高圧部です。

素材:シートアルミ/取付:シャシーとバンパーの複数箇所に固定(堅牢・低コスト)

フロントスプリッター Ventus 2

フロントのダウンフォースを大きく増やしたい場合の中心となる部品です。上面にかかる高圧が板を押し下げ、下面はウイングと同じく負圧で車体を引き下げます。力の大きさでは下面の働きのほうが上回ります。解析はスプリッター単体ではなく、サポートロッドまで含めた装着状態で行われています。

スプリッター周辺の気流を側面から見たCFD画像
図8 側面から見た流線。スプリッター下面で流れが加速し(黄〜緑)、床下へ導かれています。
スプリッター下面の圧力分布を示すCFD画像
図9 床下前方を真下から見た圧力分布。スプリッター下面の前縁の濃紺が強い負圧域で、フロント荷重の主な発生源です。前輪ハウス内の赤は、流れがよどむ高圧部です。

素材:硬質樹脂(軽量・高剛性・低コスト)

サイドスプリッター&リアスパッツ Ventus 2

サイドスプリッターは、車体上面側の高圧の空気が側面から床下へ回り込むのを抑える部品です。直進時だけでなく、旋回中や高ヨー角時の床下の流れを整えることを重視して形が決められています。増えるダウンフォースは車体中央付近に集中するため、前後バランスへの影響はわずかです。

リアスパッツはリアタイヤの前に付く小さなフェアリングで、サイドスプリッターと同じく床下の流れを整える役割です。タイヤに当たる乱れた流れを整え、ディフューザーへ向かう流れをきれいに保ちます。

サイドスプリッター周辺の気流を示すCFD画像
図10 ロッカー部まわりの流線。サイドスプリッターに沿って流れが押さえられ、前輪後方の乱れが床下へ広がるのを防いでいます。
リアスパッツ周辺の気流を後方から見たCFD画像
図11 後方から見た流線。床下後半の流れが、サイドスプリッターの後端からリアスパッツを経てディフューザーへつながっています。

素材:硬質樹脂/取付:純正樹脂サイドスカート部にリベットナットで固定(要施工)

CFD画像の読み方

このページやメーカー資料に出てくる解析画像は、色の意味を知っておくと読みやすくなります。主な表示方法は次のとおりです。

ストリームライン(流線) 空気の通り道を線で表したもの。色は流速で、赤系が速く、青系が遅い流れです。図5・図6のように、部品が流れをどこへ導いているかを見るのに使います。
Cp(圧力係数) 大気圧を0とした相対的な圧力です。0より下が低圧(吸われる側)、上が高圧(押される側)。図7・図9のような表面の圧力分布図では、赤が高圧、青が低圧です。
CpZ(上下方向の圧力分布) 車体のどこでダウンフォースやリフトが生まれているかを示します。青がダウンフォース、赤がリフトの発生域です。
CpX(前後方向の圧力分布) ドラッグがどこで発生しているかを示します。赤が抵抗を生む場所、青が車を前へ押す側の場所です。
CpT(総圧) 気流に残っているエネルギーの量です。車体を通ってエネルギーを失った空気の行き先を追うのに使います。
ポイント 空力係数の増減を表す単位で、1ポイントは係数0.001です。CdやClの変化量を表すときに使います。

開発の裏付け

実車スキャンから作った解析モデル

解析の精度は、もとになるモデルの精度で決まります。VERUSはGRカローラの実車を自社で3Dスキャンし、最も誤差の大きい箇所でも1mm未満のCADモデルを作りました。フロントバンパーからホイールハウスへ抜けるダクトまで解析モデルに含めています。

3DスキャンデータとCADモデルの照合画像
図12 スキャンデータ(青)とCADモデル(グレー)の重ね合わせ。まだらに見えるのは、両者の差がごく小さいためです。

直進だけを前提にしないCFD

解析には有限体積法CFDのOpenFOAM v2106(SIMPLE法、K-Omega SST乱流モデル)を使っています。実際の走行ではほぼ起こらない完全な直進状態ではなく、0.5°のヨー角を基本条件として、走行中に車が受ける流れを解析しています。

実績のある設計手法と実走テスト

開発には、CFDに加えて風洞テスト、サーキットでの実走テスト、過去の実績のある設計の知見が使われています。純正部品並みのフィットを目標にしており、エンジンには手を入れないため、メーカー保証もそのまま残ります。

構成のご相談

走り方(街乗り中心、走行会、タイムアタック)と現在の仕様をお知らせいただければ、上のデータをもとに構成をご提案します。単品から段階的に導入するご相談もお受けしています。


適合:トヨタ GRカローラ。図版と数値はVERUS Engineering発行「Performance of Verus Engineering Ventus Packages — Toyota GR Corolla Platform」(2023年11月9日)によるもので、解説は同資料をもとにRK-ONLINEが構成・翻訳しました。