A90/A91スープラ用 VERUS ENGINEERING Ventusエアロパッケージ1-3
RK-ONLINE / VERUS ENGINEERING FOR TOYOTA GR SUPRA (A90)
ヴェルスエンジニアリング VENTUS AERO PACKAGE 1–3
Ventusパッケージは、米Verus EngineeringがトヨタGRスープラ(A90)のために開発した3段階のエアロキットです。開発思想は「効率の最大化」。ドラッグの増加を最小限、あるいは無視できるレベルに抑えながらダウンフォースを大きく積み増し、純正に近い空力バランスを保つことを狙っています。
このページでは、メーカー発行の技術資料(2020年2月版)に掲載されたデータと解析画像を、日本のユーザー向けに読み解いていきます。
パッケージ構成
VENTUS 1
床下と快適性から
ストリート中心の方向け。リアディフューザーで安定性を高め、ダイブプレーンで前まわりを整える基本構成。A90特有の「窓開け走行時の風のバフェッティング(こもり音)」を解消するウインドディフレクターも含まれます。
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- リアディフューザー
- ダイブプレーン(カナード)
- ウインドディフレクター
VENTUS 2
前に荷重を足す
街乗りとサーキットを一台でこなす方向け。フロントスプリッターが加わり、グラウンドエフェクトによる前輪側の荷重が生まれます。リアはディフューザーが支えるため、前後バランスを保ったままダウンフォースが増えます。
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- Ventus 1 の全部品
- フロントスプリッター
VENTUS 3
前後で挟み込む
競技・タイムアタック志向の方向け。高ダウンフォース設計のUCWリアウイングが加わる最大構成です。翼角13°の解析では、200mph時に1,600lbs級のダウンフォース上乗せをドラッグ増約200lbsで実現しています。
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- Ventus 2 の全部品
- UCWリアウイング
構成一覧
| 部品 | VENTUS 1 | VENTUS 2 | VENTUS 3 |
|---|---|---|---|
| リアディフューザー | ● | ● | ● |
| ダイブプレーン(カナード) | ● | ● | ● |
| ウインドディフレクター | ● | ● | ● |
| フロントスプリッター | - | ● | ● |
| UCWリアウイング | - | - | ● |
各部品は単品でも装着できますが、前後の空力バランスを純正に近いまま保つため、メーカーはパッケージ単位での導入を最良としています。
データで見る効果
下のグラフは、各パッケージが純正A90と比べてどれだけダウンフォース(太線)とドラッグ(マーカー付き線)を増やすかを、対気速度ごとに示したものです。空力の力は速度の2乗に比例して増えるため、曲線は右肩上がりのカーブを描きます。
各パッケージとも、ダウンフォースの増分に対してドラッグの増分がひと桁小さいのが読み取れます。「効率の良いダウンフォース」というVerusの開発思想がそのまま数字に表れた形です。
たとえば時速160km(100mph)付近では、Ventus 3(翼角13°)は約400lbs(約180kg)のダウンフォースを純正比で上乗せしますが、ドラッグ増は約50lbsに収まっています。Ventus 2はドラッグ増ほぼゼロのまま約170lbsを積み増します。
ウイング翼角でどれだけ変わるか — UCWリアウイングは翼角の調整でリアの荷重を大きく増減できます。下はウイング単体の風速別データ(0〜15°)。車両全体のグラフ(FIG.02)と組み合わせれば、翼角変更時のダウンフォースとドラッグの変化を見積もれます。
部品ごとの解説
4.1リアディフューザーV1/V2/V3+
効率の良いダウンフォースを作る要の部品です。市販車の空気抵抗の多くは、車体後方にできる低圧の渦領域(ウェイク)が車を後ろへ引っ張る「圧力抵抗」。ディフューザーは床下の空気をこの渦領域へ導いて埋めることで、ダウンフォース(=安定性)を得ながら全体のドラッグを下げます。じつはストリートカーにこそ向いた部品です。
ディフューザー表面だけを見るとCpXプロットでは抵抗(誘導抵抗)が出ているように見えますが、ウェイクを埋める効果まで含めた車両全体では抵抗低減に働く——というのが資料の解説です。形状はメインスロートと、Verus製の代名詞であるセカンドスロートの2段構成。LIC解析では外側セクションが完全な付着流、中央がやや張り詰めた流れであることが確認されています。
4.2ダイブプレーン(カナード)V1/V2/V3+
板そのものが受ける力(下面低圧・上面高圧)で生まれるダウンフォースは一部にすぎません。本来の仕事は車体まわりの流れの制御です。意図的に作り出した渦がフェンダー内の空気を引き抜き、ボディに働くリフトを減らします。位置と角度が性能を左右するため、専用の位置決めテンプレートが用意されています。
4.3ウインドディフレクターV1/V2/V3+
A90スープラで知られる「窓を開けて走ると起こる強いバフェッティング(圧力の共鳴によるこもり音)」を解決する部品です。ミラー付け根に装着したディフレクターが窓まわりの流れを意図的に乱し、共鳴の発生条件を崩します。片窓・両窓いずれの開け方でも効果を発揮します。
4.4フロントスプリッターV2/V3+
前まわりの主役です。平らな板に見えますが、路面との間で発生するグラウンドエフェクトにより大きなフロントダウンフォースを生みます。解析はサポート類まで含めた実装状態で行われ、アセンブリ全体の空力効率は揚抗比(L/D)6。スプリッター前縁で発生した渦が外側後方へ流れ、大きな低圧域を作ってダウンフォースを稼ぐ——という動作がLICとストリームラインの両方で確認されています。中央部は付着流が保たれています。
4.5UCWリアウイングV3+
リアに大きなダウンフォースが欲しい場合の答えです。翼型はCFDで設計・最適化したのち風洞で熟成させ、最終確認はサーキット実走で行われました。仕事の大半は下面(負圧面)が担っており、解析では下面のCpが−1以下まで下がる一方、上面は+0.6止まり。下面の流速が上面より速いことで圧力差が生まれ、さらにウイングは車体後方の流れの向きを「下向き」から「真後ろ」へ整えます。
CFD画像の読み方
本ページやメーカー資料に登場する解析画像は、色の意味が分かると一気に読めるようになります。主な可視化手法をまとめました。
STREAMLINEストリームライン(流線)
空気の通り道を線で表したもの。色は流速を示し、赤系が速く、青系が遅い流れです。FIG.10のように、部品が流れをどこへ導いているかを読むのに使います。
CpZ上下方向の圧力分布
車体表面のどこがダウンフォース/リフトを生んでいるかを示します。青=ダウンフォース発生域、赤=リフト発生域。FIG.07の「青く染まった面」が仕事をしている場所です。
CpX前後方向の圧力分布
ドラッグ(抵抗)がどこで発生しているかの可視化。赤が抵抗を生む場所、青は逆に車を前へ押す(推力側の)場所を表します。ディフューザーの「誘導抵抗」もこの図で読みます。
CpT総圧(気流のエネルギー)
気流が持つエネルギーの残量。車体を通過してエネルギーを失った空気の行き先や、後方のウェイク領域を追うのに使います。
LIC表面流の可視化
表面を流れる「オイルフロー」を計算で再現したもの。実車のフロービズ試験と対応させやすく、剥離や付着の様子を読むのに使います(FIG.09)。
Cp圧力係数
大気圧を0とした相対圧力。0より下が低圧(吸われる側)、上が高圧(押される側)です。無次元数なので速度が変わっても比較できます。
WALL SHEAR壁面せん断応力
表面に働く空気の摩擦力。値の変化が急な場所や小さい場所から、剥離域や流れの急変を見つけるのに使います。
POINTSポイント
空力係数の増減を表す単位で、1ポイント=係数0.001。Cd(抗力係数)やCl(揚力係数)の変化量を示すときに使われます。
開発の裏付け
「直進」を前提にしないCFD
解析には有限体積法CFDのOpenFOAM V6(SIMPLE法、K-Omega SST乱流モデル)を使用。現実の走行でほぼ起こらない完全な直進気流ではなく、0.5°のヨー角を基本条件としてフルカーを解析しています。境界条件は自動車空力の標準的なセットアップです。
風洞と実走で確認してから製品化
CFDで設計した形状は風洞実験で熟成させ、最終的にプロドライバーによるサーキット実走で確認。過去の開発で実証済みの設計手法も投入されています。仕上げは純正並みのフィット感を目指しており、エンジンに手を入れないため純正保証もそのまま残ります。
単品でも、パッケージなら最良
各部品は単品装着も可能ですが、ラップタイム短縮という目的に対して最も効果的なのはパッケージ単位での装着です。純正に近い空力バランスを保ったままダウンフォースを積み増せるよう、構成が設計されています。
どのパッケージにするか迷ったら
走行ステージ(街乗り中心か、走行会か、タイムアタックか)と現在の仕様をお知らせいただければ、上記のデータをもとに構成をご提案します。単品からの段階的な導入のご相談も可能です。
適合:トヨタ GRスープラ(A90)。本ページの図版・数値はVerus Engineering発行「Performance of Verus Engineering Ventus Packages — Toyota A90 Supra Platform」(2020年2月25日版)より。解説は同資料に基づきRK-ONLINEが構成・翻訳したものです。