NDロードスター用 VERUS ENGINEERING Ventusエアロパッケージ1-2

RK-ONLINE / VERUS ENGINEERING FOR MAZDA ROADSTER (ND)

ヴェルスエンジニアリング VENTUS AERO PACKAGE 1–2

Ventusパッケージは、米Verus Engineeringがマツダ ロードスター(ND)のために開発した2段階のエアロキットです。開発思想は「効率の最大化」。ドラッグの増加を最小限、あるいは無視できるレベルに抑えながらダウンフォースを積み増し、純正に近い空力バランスを保つことを狙っています。パワーの限られたロードスターにとって、この「抵抗を増やさない」ことは何より重要です。

このページでは、メーカー発行の技術資料(2024年8月版)に掲載されたデータと解析画像を、日本のユーザー向けに読み解いていきます。

床下パネルによるCd(抗力係数)低減10ポイント
サイドスプリッターによるダウンフォース追加+6ポイント(ドラッグ増ゼロ)
高効率リアウイングの翼角データ範囲0〜15°
公表グラフの基準ウイング翼角(Ventus 2)
CFDソルバー/解析ヨー角OpenFOAM V6 / 0.5°
Ventus 2を装着したロードスター(ND)のCFDストリームライン可視化
CFDVentus 2装着状態のロードスター(ND)解析モデル。ボディ表面の圧力分布と、ウイングへ流れ込むストリームラインを重ねた可視化です。
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パッケージ構成

VENTUS 1

床下で作る安定感

ストリート中心の方向け。翼物なしで、床下の整流を軸にダウンフォースを上乗せする構成です。ドラッグ増はごくわずかに抑えられ、幌やRFのシルエットを崩しません。

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構成部品

  • ダイブプレーン(カナード)
  • サイドスプリッター
  • リアディフューザー&サスペンションカバー
  • 床下パネル(アンダーボディパネル)
Ventus 1のフロントビュー。ダイブプレーンとサイドスプリッターを青色表示
FIG.03Aフロント3/4ビュー。青いパーツがダイブプレーンとサイドスプリッター。外観の変化は控えめです。
Ventus 1の床下ビュー。ディフューザーと床下パネルを青色表示
FIG.03B床下ビュー。リアディフューザー&サスペンションカバーから床下パネルまで、床下がほぼ一面カバーされます。

VENTUS 2

前後に翼を持つ

サーキットを本気で走る方向け。フロントスプリッターと、低パワー車のために設計された高効率リアウイングが加わる最大構成です。時速160km級の速度域では約250kgのダウンフォースを、わずかなドラッグ増で手に入れます。

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構成部品

  • Ventus 1 の全部品
  • フロントスプリッター
  • 高効率リアウイング
Ventus 2のフロントビュー。スプリッターとウイングを青色表示
FIG.04Aフロント3/4ビュー。スプリッターと高効率リアウイング(いずれも青)が加わり、前後で荷重を作る構成になります。
Ventus 2の床下ビュー。装着部品を青色表示
FIG.04B床下ビュー。Ventus 1の床下部品はそのままに、前端にスプリッター下面という新しい負圧面が加わります。
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構成一覧

部品 VENTUS 1 VENTUS 2
ダイブプレーン(カナード)
サイドスプリッター
リアディフューザー&サスペンションカバー
床下パネル(アンダーボディパネル)
フロントスプリッター
高効率リアウイング

各部品は単品でも装着できますが、前後の空力バランスを保つため、メーカーはパッケージ単位での導入を最良としています。解析は純正車高で行われています。

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データで見る効果

下のグラフは、各パッケージが純正(純正車高)と比べてどれだけダウンフォース(青線)とドラッグ(グレー線)を増やすかを、対気速度ごとに示したものです。空力の力は速度の2乗に比例して増えるため、曲線は右肩上がりのカーブを描きます。

注目してほしいのはグレーのドラッグ線。どちらのパッケージもグラフの底に張り付いたままです。Ventus 2は時速160km(100mph)で約220lbs(約100kg)、160mphでは約560lbs(約250kg)のダウンフォースを上乗せしますが、ドラッグ増はその1/10ほどに収まっています。

Ventus 1は翼物なしの構成らしく増分はおだやかですが、ドラッグ増がほぼゼロのため「失うもののないダウンフォース」です。ND乗りにとって導入しやすい第一歩といえます。

ロードスター(ND)のVentusパッケージ別ダウンフォース増分とドラッグ増分のグラフ
FIG.02純正比のダウンフォース増分とドラッグ増分。横軸は対気速度[mph]、縦軸は力[lbs]。Ventus 2はウイング翼角6°の状態。1 lbs≒0.45kg、100mph≒161km/h。

ウイング翼角でどれだけ変わるか — 高効率リアウイングは0〜15°の範囲で翼角データが公開されています(車両全体のグラフは6°基準)。下のウイング単体グラフと組み合わせれば、翼角変更時のダウンフォース変化を見積もれます。

高効率リアウイングの翼角別ダウンフォースのグラフ
FIG.05高効率リアウイング単体の翼角別ダウンフォース(0〜15°)。翼角3°刻みのデータが公開されており、セッティングの目安になります。
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部品ごとの解説

4.1リアディフューザー&サスペンションカバーV1/V2+

効率の良いダウンフォースを作る要の部品です。市販車の空気抵抗の多くは、車体後方にできる低圧の渦領域(ウェイク)が車を後ろへ引っ張る「圧力抵抗」。ディフューザーは床下の空気をこの渦領域へ導いて埋めることで、ダウンフォースを得ながら全体のドラッグを下げます。じつはストリートカーにこそ向いた部品です。

形状はメインスロートと、Verus製の代名詞であるセカンドスロートの2段構成。LIC解析では外側セクションが完全な付着流を保つ一方、中央部はNDの排気管とサブフレームの影響でやや張り詰めた流れになることまで確認されています。

ロードスターの床下全体の圧力分布を示すCFD画像
FIG.06床下のCpZ分布(青=ダウンフォース発生域)。カバーで平滑化された床下からディフューザーまで、広い範囲が低圧を保っています。
車体後方のウェイク領域を示す側面CpTプロット
FIG.07側面から見たCpT(総圧)プロット。車体後方の色の濃い領域がウェイク。ここを床下からの流れで小さくすることがドラッグ低減につながります。
4.2床下パネル(アンダーボディパネル)V1/V2+

NDの床下に残る大きな開口部を、前後2枚のフラットパネルで塞ぎます。床下の乱れた空気が減ることで、CFD上でCd(抗力係数)を10ポイント低減。数少ない「付けるだけで速度の伸びに効く」部品です。さらに車体に前傾姿勢(レーキ)が付いている場合は、床下全体が緩いディフューザーとして働き、ダウンフォースも増えます。

構成 フロント/リアの2枚組 効果 Cd −10ポイント(CFD)
4.3サイドスプリッターV1/V2+

車体側面から床下へ回り込む空気を仕切る部品です。効果はダウンフォース+6ポイント、ドラッグ増ゼロ。しかも横風や旋回でヨー角が付いた状態ではさらに効きが増します。増えるダウンフォースは車体中央に集中するため、前後バランスを崩さないのも美点です。

ロードスターの車体表面圧力分布を前方3/4から見たCFD画像
FIG.12車体表面のCp分布(前方3/4ビュー)。サイドスプリッターはサイドシル下端に沿って装着され、側面から床下への巻き込みを仕切ります。
4.4ダイブプレーン(カナード)V1/V2+

板そのものが受ける力(下面低圧・上面高圧)で生まれるダウンフォースは一部にすぎません。本来の仕事は車体まわりの流れの制御です。意図的に作り出した渦がフェンダー内の空気を引き抜き、ボディに働くリフトを減らします。位置と角度が性能を左右するため、専用の位置決めテンプレートが用意されています。

ダイブプレーン周りの気流を可視化したCFD画像
FIG.09フロントまわりのストリームライン。ダイブプレーンを通過した流れが渦となってフェンダー脇を下り、床下へと空気を導いています。
4.5フロントスプリッターV2+

前まわりの主役です。平らな板に見えますが、路面との間で発生するグラウンドエフェクトにより大きなフロントダウンフォースを生みます。解析はサポート類まで含めた実装状態で実施。スプリッター前縁で発生した渦が外側後方へ流れて大きな低圧域を作り、中央部は付着流を保つ——という動作がLICとストリームラインで確認されています。純正のタイヤディフレクターが作る高圧域との関係まで解析済みです。

スプリッター表面の流れを可視化したLICプロット
FIG.08床下の表面流(LICプロット)。スプリッター前縁から外側へ伸びる筋が前縁渦。この渦の下が強い負圧域になります。
4.6高効率リアウイングV2+

ロードスターのような低パワー車のために設計されたウイングです。翼型はアジョイント(随伴)最適化ソルバーで設計されており、少ないドラッグで効率よくダウンフォースを生みます。仕事はほぼすべて下面(負圧面)が担っており、解析では下面のCpが−1以下まで下がる一方、上面は+0.6止まり。下面の流速が上面より速いことで圧力差が生まれ、さらにウイングは車体後方の流れの向きを「下向き」から「真後ろ」へ整えます。

高効率リアウイングを前上方から見た圧力分布CFD画像
FIG.10前上方から見たCpZ分布。ウイング上面が赤(=押し下げる高圧側)に染まっています。見えない下面側はCp−1以下の強い負圧です。
ウイング周辺の流れを側面から可視化したCFD画像
FIG.11側面から見たストリームライン。ルーフ後方からウイングを通過した流れが、下向きではなく真後ろへ揃えられていく様子が分かります。
翼角 0〜15°のデータを公開(車両解析の基準は6°)
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CFD画像の読み方

本ページやメーカー資料に登場する解析画像は、色の意味が分かると一気に読めるようになります。主な可視化手法をまとめました。

STREAMLINEストリームライン(流線)

空気の通り道を線で表したもの。色は流速を示し、赤系が速く、青系が遅い流れです。FIG.09のように、部品が流れをどこへ導いているかを読むのに使います。

CpZ上下方向の圧力分布

車体表面のどこがダウンフォース/リフトを生んでいるかを示します。青=ダウンフォース発生域、赤=リフト発生域。FIG.06の「青く染まった面」が仕事をしている場所です。

CpX前後方向の圧力分布

ドラッグ(抵抗)がどこで発生しているかの可視化。赤が抵抗を生む場所、青は逆に車を前へ押す(推力側の)場所を表します。ディフューザーの「誘導抵抗」もこの図で読みます。

CpT総圧(気流のエネルギー)

気流が持つエネルギーの残量。車体を通過してエネルギーを失った空気の行き先や、後方のウェイク領域を追うのに使います(FIG.07)。

LIC表面流の可視化

表面を流れる「オイルフロー」を計算で再現したもの。実車のフロービズ試験と対応させやすく、剥離や付着の様子を読むのに使います(FIG.08)。

Cp圧力係数

大気圧を0とした相対圧力。0より下が低圧(吸われる側)、上が高圧(押される側)です。無次元数なので速度が変わっても比較できます。

WALL SHEAR壁面せん断応力

表面に働く空気の摩擦力。値の変化が急な場所や小さい場所から、剥離域や流れの急変を見つけるのに使います。

POINTSポイント

空力係数の増減を表す単位で、1ポイント=係数0.001。「Cd10ポイント低減」は抗力係数が0.010下がったという意味です。

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開発の裏付け

「直進」を前提にしないCFD

解析には有限体積法CFDのOpenFOAM V6(SIMPLE法、K-Omega SST乱流モデル)を使用。現実の走行でほぼ起こらない完全な直進気流ではなく、0.5°のヨー角を基本条件としてフルカーを解析しています。境界条件は自動車空力の標準的なセットアップです。サイドスプリッターのように「ヨー角が付いた状態でこそ効く」部品の評価には、この条件設定が効いてきます。

実績ある設計手法の積み上げ

ロードスター(ND)用パッケージは、最新のCFD技術と、これまで多くの車種で実証されてきた設計手法(セカンドスロート付きディフューザー、前縁渦を使うスプリッターなど)を組み合わせて開発されています。ウイングの翼型設計にはアジョイント最適化ソルバーが使われています。

純正並みのフィットと保証の維持

仕上げは純正並みのフィット感を目指して設計されており、エンジンに手を入れないため純正保証もそのまま残ります。各部品は単品装着も可能ですが、ラップタイム短縮という目的に対して最も効果的なのはパッケージ単位での装着です。

どちらのパッケージにするか迷ったら

走行ステージ(街乗り中心か、走行会か、タイムアタックか)と現在の仕様をお知らせいただければ、上記のデータをもとに構成をご提案します。単品からの段階的な導入のご相談も可能です。

適合:マツダ ロードスター(ND)。本ページの図版・数値はVerus Engineering発行のロードスター(ND)用技術資料「Performance of Verus Engineering Ventus Packages」(2024年8月14日版)より。解説は同資料に基づきRK-ONLINEが構成・翻訳したものです。