シビック タイプR(FK8) VERUS ENGINEERING Ventusエアロ解説

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シビック タイプR(FK8) VERUS ENGINEERING Ventusエアロ解説

  • 対応ホンダ シビック タイプR(FK8)
  • 出典VERUS「Performance of Verus Engineering Ventus Packages : Honda FK8 Civic Type R Platform」(2024年4月)

Ventusパッケージは、米VERUS Engineeringがホンダ シビック タイプR(FK8)用に開発した3段階のエアロキットです。CFD解析、風洞実験、プロドライバーによる実走テストを経て設計されています。純正並みのフィットで、純正保証を損なわないボルトオン構成です。

FK8はもともと空力に優れた車ですが、Ventusでは純正比でどれだけ上積みできるかをすべて数値で示しています。このページでは、メーカー発行の技術資料(2024年4月版)に載っているデータと解析画像を、当店で日本語に訳して解説します。

主な数値(メーカー資料より) 値
Ventus 3のダウンフォース上乗せ(純正比・200mph時) 800〜1000lbs
UCWリアウイングの翼角調整範囲 −1〜12°
低翼角UCWのドラッグ(Ventus 2比) 低減
CFD解析の基本ヨー角 0.5°+旋回条件
CFDソルバ OpenFOAM v2106
Ventusパッケージ装着FK8シビック タイプRのCFD解析。車体を包むストリームライン
図1 CFD解析中のFK8。色付きの線は流速で色分けしたストリームラインです。フロントから床下へ流れ込んだ空気が、側面とリアで大きく渦を巻く様子まで再現されています。

パッケージ構成

Ventus 1(ストリート中心の方向け)

外観をほとんど変えない構成です。ダイブプレーンとリアディフューザーの2点で、ドラッグへの影響を最小限に抑えながら、純正比でダウンフォースを足します。

  • ダイブプレーン(カナード)
  • アルミ製リアディフューザー
Ventus 1のフロントビュー。ダイブプレーンを青色表示
図2A フロント。バンパー両脇の小さな青い部品がダイブプレーンで、外観の変化はわずかです。
Ventus 1のリアビュー。ディフューザーを青色表示
図2B リア。リアバンパー下の青い部品がディフューザーです。床下の空気を整えながら後方へ流します。

Ventus 2(街乗りとサーキットを1台でこなす方向け)

Ventus 1に、スプリッター、サイドスプリッター、純正ステーを使うP10カーボンウイングを加えます。純正に近い外観(OEM+)のまま、大きなダウンフォースを得る構成です。

  • Ventus 1の全部品
  • フロントスプリッター&エアダム
  • サイドスプリッター
  • P10リアウイング(純正ステー流用)
Ventus 2のフロントビュー。スプリッターとサイドスプリッター、P10ウイングを青色表示
図3A フロント。スプリッターとサイドスプリッターが加わり、P10ウイングは純正ウイングの位置に収まります。
Ventus 2のリアビュー。ディフューザーとP10ウイングを青色表示
図3B リア。ディフューザーとP10ウイングで、リアの荷重を効率よく増やします。

Ventus 3(競技・タイムアタック志向の方向け)

ウイングをトランクマウントのUCWに置き換えた最大構成です。翼角を寝かせればVentus 2よりドラッグを減らしながら、性能を大きく上積みできます。

  • Ventus 2の全部品(P10ウイングを除く)
  • UCWリアウイング(翼角−1〜12°)

UCWのトランクマウントは、純正ウイングの取付部(ハッチの高強度補強部)を利用します。

Ventus 3のフロントビュー。全エアロパーツを青色表示
図4A フロント。UCWウイングは純正ウイングより高い位置に付き、乱れの少ない気流を受けられます。
Ventus 3のリアビュー。UCWウイングとディフューザーを青色表示
図4B リア。UCWウイング、ディフューザー、サイドスプリッターを組み合わせた最大構成です。

シビック タイプR(FK8)用VERUSパーツ一覧を見る

構成一覧

部品 Ventus 1 Ventus 2 Ventus 3
ダイブプレーン(カナード) ● ● ●
アルミ製リアディフューザー ● ● ●
フロントスプリッター&エアダム - ● ●
サイドスプリッター - ● ●
P10リアウイング - ● -
UCWリアウイング - - ●

各部品は単品でも装着できますが、前後の空力バランスを安全に保つため、メーカーはパッケージ単位での導入を推奨しています。

データで見る効果

下のグラフは、各パッケージが純正のFK8(純正ウイング装着車)と比べてダウンフォース(上段)とドラッグ(下段)をどれだけ増やすかを、対気速度ごとに示したものです。空力の力は速度の2乗に比例して増えるので、曲線は右に行くほど上がります。

Ventus 3の赤い帯は、UCWウイングの翼角(−1〜12°)による調整幅です。下段のドラッグを見ると、翼角を寝かせたVentus 3はVentus 2より空気抵抗が小さくなる領域があります。ウイングの取付位置と翼型の効率によるものです。

時速160km付近(100mph)では、純正比でVentus 2が約100lbs(約45kg)、Ventus 3が200lbs(約90kg)を超えるダウンフォースを上乗せします。

Ventusパッケージ別のダウンフォースとドラッグの速度特性グラフ
図5 純正比のダウンフォース増分(上)とドラッグ増分(下)。横軸は対気速度[mph]、縦軸は力[lbs]。1lbs≒0.45kg、100mph≒161km/h。Ventus 3の帯はUCW翼角−1〜12°の範囲です。

部品ごとの解説

ダイブプレーン(カナード) Ventus 1〜3

最低地上高を変えずに、フロントのダウンフォースを少し足したいときに向く部品です。板そのものが受ける力(上面が高圧、下面が低圧)は大きくなく、主な役割は車体まわりの流れを整えることです。意図的に作る渦がフェンダー内の空気を引き抜き、ボディに働くリフトを減らします。

FK8フロントバンパーのダイブプレーン取付位置を示す画像
図6 正面。フォグランプ脇の青い部品がダイブプレーン、バンパー下端の青いラインがスプリッターの前縁です。位置決めテンプレートが付属するので、この位置を正確に再現できます。

素材:2×2ツイルカーボン(クリアコート仕上げ)/取付:位置決めテンプレート付属

アルミ製リアディフューザー Ventus 1〜3

市販車の空気抵抗の多くは、車体の後ろにできる低圧の渦(ウェイク)が車を後ろへ引っ張る「圧力抵抗」です。ディフューザーは下面に低圧を作ってダウンフォースを生み、同時に床下の空気で後方の渦を埋めてドラッグも減らします。安定性と抵抗の低減を両方得られるので、街乗り中心の車にも向いています。

車体後方のウェイク領域を可視化したCFD画像
図7A 側面の流速分布。車体後方の紺色の領域が、流速を失ったウェイク(渦)です。ディフューザーはここに床下の空気を送り込み、車を後ろへ引っ張る力を弱めます。
リアディフューザー面の圧力分布を床下から見たCFD画像
図7B 床下から見たリアまわりの圧力分布。ディフューザー面が青(低圧)に保たれ、ダウンフォースを生んでいます。

素材:シートアルミ/取付:シャシーとバンパーの複数箇所に固定

フロントスプリッター&エアダム Ventus 2・3

フロントのダウンフォースを大きく増やすための中心的な部品です。平らな板に見えますが、路面との間で働くグラウンドエフェクトによって前輪に大きな荷重を生みます。上面の高圧が板を押し下げ、下面はそれ以上のダウンフォースを生みます。解析はスプリッター単体ではなく、エアダムや取付ハードウェアまで含めた装着状態で行われています。

スプリッター下面の圧力分布を示すCFD画像
図8A 床下前方の圧力分布。スプリッター下面の全体が青(低圧)で、前端の濃い青が最も強く路面へ吸い付いている場所です。
スプリッター表面の流れを示すLICプロット
図8B 同じ場所のLICプロット(表面のオイルフローを再現した表示)。流れの筋がそろっており、剥離せずに働いていることがわかります。

素材:硬質樹脂(軽量・高剛性)

サイドスプリッター Ventus 2・3

車体上面の高圧の空気が、側面から床下へ回り込むのを抑える部品です。開発では直進時だけでなく、旋回中(高ヨー角)の床下の流れを整えることを重視しています。増えるダウンフォースは車体中央付近に集中するため、前後の空力バランスはほとんど変わりません。

サイドスプリッター沿いの気流を可視化したCFD画像
図9 フロント斜め前方から見た図。スプリッター脇からサイドスプリッターに沿って流れるストリームラインが、サイドシルの下をまっすぐ通過しており、回り込みが抑えられていることがわかります。

素材:硬質樹脂/取付:付属ハードウェアでボルトオン

P10リアウイング Ventus 2

純正ウイングの支柱(ステー)をそのまま使い、翼(エレメント)だけを置き換えるカーボンウイングです。翼型は、UCWやV1XなどVERUSが過去にアジョイント最適化ソルバで開発したプロファイルをもとに設計されています。純正ウイングより大きなダウンフォースを、はるかに高い効率で生みます。外観は純正に近いまま(OEM+)で、性能だけを引き上げる選択肢です。

P10ウイング周りの気流を側面から可視化したCFD画像
図10 側面。ルーフを越えた流れ(緑の帯)が、純正位置に付いたP10ウイング(青)で整えられて後方へ抜けていきます。

素材:2×2ツイルカーボン(クリアコート仕上げ)/取付:純正ステー流用・純正エレメントと交換

UCWリアウイング Ventus 3

リアに大きなダウンフォースが必要な場合のウイングです。翼型はCFDで設計したのち風洞で仕上げています。働きの大半は下面(負圧面)が担い、上面も下面ほどではありませんがダウンフォースを生みます。

トランクマウントは、純正ウイングの取付部(ハッチの高強度補強部)を利用します。トランク外面に合わせて成形したビレット6061アルミの削り出しで、UCWの荷重をシャシーへ確実に伝える強度と剛性があります。翼角は−1〜12°で調整できます。

UCWウイング上面の圧力分布を示すCFD画像
図11A 前上方から見た表面圧力。UCWウイングの上面が赤(高圧)で、翼を上から押さえ付けています。ボンネット先端の赤も高圧域です。
UCWウイング周りの流速分布を側面から見たCFD画像
図11B 側面の流速分布。高い位置に付いたUCW(青)の下面で流れが加速し(黄色)、強い負圧、つまりダウンフォースを生んでいます。

素材:2×2ツイルカーボン(クリアコート仕上げ)/マウント:ビレット6061アルミ削り出しトランクマウント/翼角:−1〜12°

CFD画像の読み方

このページやメーカー資料に出てくる解析画像は、色の意味を知っておくと読みやすくなります。主な表示方法は次のとおりです。

ストリームライン(流線) 空気の通り道を線で表したもの。色は流速で、赤系が速く、青系が遅い流れです。図1・図9のように、部品が流れをどこへ導いているかを見るのに使います。
Cp(圧力係数) 大気圧を0とした相対的な圧力です。0より下が低圧(吸われる側)、上が高圧(押される側)。図7B・図8Aの青い面が、路面に吸い付いている場所です。
CpX(前後方向の圧力分布) ドラッグがどこで発生しているかを示します。赤が抵抗を生む場所、青が車を前へ押す側の場所です。
CpZ(上下方向の圧力分布) 車体のどこでダウンフォースやリフトが生まれているかを示します。青がダウンフォース、赤がリフトの発生域です。
LICプロット(表面の流れ) 表面を流れる空気をオイルフローのように表示する方法です(図8B)。実車のフロービズテストと照らし合わせやすく、剥離の有無を確認できます。
ポイント 空力係数の増減を表す単位で、1ポイントは係数0.001です。抗力係数(Cd)や揚力係数(Cl)の増減を表すときに使います。

開発の裏付け

直進だけを前提にしないCFD

開発には有限体積法CFDのOpenFOAM v2106(SIMPLE法、K-Omega SST乱流モデル)を使っています。境界条件は自動車解析で標準的な構成で、車両全体のモデルを解析しています。実際の走行ではほぼ起こらない完全な直進状態ではなく、0.5°のヨー角を基本条件とし、複数の車高とヨーレートで旋回中の状態も解析しています。

FK8のフルカーCFD解析。床下と後方の気流を可視化
図12 車両全体の解析を斜め後方から見た図。床下を抜ける速い流れ(暖色)と、リアで巻き上がる渦(青〜紫)が見えます。ディフューザーとウイングは、この流れの中で働くように設計されています。

風洞と実走で確認してから製品化

CFDで設計した形状を風洞実験で詰め、最後にプロドライバーがサーキットで確認しています。過去の開発で実績のある設計手法も取り入れています。純正並みのフィットを目標にしたボルトオン設計です。

純正保証を残す設計方針

Ventusパッケージは、エンジンに手を入れずに車両性能を高めるという考え方で設計されています。純正のフィットを保ったまま装着でき、工場出荷時の保証を残したままサーキットでの性能を引き上げられます。

構成のご相談

走り方(街乗り中心、走行会、タイムアタック)と現在の仕様をお知らせいただければ、上のデータをもとに構成をご提案します。単品から段階的に導入するご相談もお受けしています。


適合:ホンダ シビック タイプR(FK8)。図版と数値はVERUS Engineering発行「Performance of Verus Engineering Ventus Packages : Honda FK8 Civic Type R Platform」(2024年4月23日)によるもので、解説は同資料をもとにRK-ONLINEが構成・翻訳しました。