BMW M2(G87) VERUS ENGINEERING Ventusエアロ解説
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BMW M2(G87) VERUS ENGINEERING Ventusエアロ解説
- 対応BMW M2(G87)
- 出典VERUS「Performance of Verus Engineering Ventus Packages — BMW G87 M2 Platform」(2024年2月)
Ventusパッケージは、米VERUS EngineeringがBMW M2(G87)用に開発した2段階のエアロキットです。実車の3DスキャンをもとにしたモデルでのCFD解析、風洞実験、プロドライバーによる実走テストを経て設計されており、各部品の効果は数値で公開されています。
G8X系のMモデルはエンジンの下にオイルクーラーを持ちます。そのため大型のフードルーバーで熱と圧力を抜き、それによって落ちるリアウイングの効率をボルテックスジェネレーターで取り戻す、という車種専用の設計になっています。このページでは、メーカー発行の技術資料(2024年2月版)に載っているデータと解析画像を、当店で日本語に訳して解説します。
| 主な数値(メーカー資料より) | 値 |
|---|---|
| フードルーバーによる前バランスの改善(UCW 5°時) | 27%→42% |
| ボルテックスジェネレーターによるドラッグ低減(Ventus 2・5°時) | −2% |
| ボルテックスジェネレーターによるダウンフォース増加(同条件) | +5% |
| 解析モデルのスキャン誤差(最大部) | 1mm未満 |
| CFDソルバー | OpenFOAM v2106 |
パッケージ構成
Ventus 1(サーキットを走り始めた方向け)
ダイブプレーンとUCWウイングで前後に荷重を作り、ボルテックスジェネレーターでウイングの効率を補う構成です。メーカーはフードルーバーの追加を推奨しています。
- ダイブプレーン(カナード)
- UCWリアウイング
- ボルテックスジェネレーター
- カーボンフードルーバー(推奨オプション。ダウンフォース増と空力バランスの改善)
- ウインドディフレクター(オプション。全仕様に追加できます)


Ventus 2(タイムアタック・競技志向の方向け)
スプリッターとサイドスプリッターで前を、UCWで後ろを押さえる最大構成です。フードルーバーも標準で含まれます。
- Ventus 1の全部品
- フロントスプリッター(エンドプレート付)
- サイドスプリッター
- カーボンフードルーバー
- ウインドディフレクター(オプション)


構成一覧
| 部品 | Ventus 1 | Ventus 2 |
|---|---|---|
| ダイブプレーン(カナード) | ● | ● |
| UCWリアウイング | ● | ● |
| ボルテックスジェネレーター | ● | ● |
| カーボンフードルーバー | 推奨オプション | ● |
| フロントスプリッター(エンドプレート付) | - | ● |
| サイドスプリッター | - | ● |
| ウインドディフレクター | オプション | オプション |
各部品は単品でも装着できますが、前後の空力バランスを崩さないよう、メーカーはパッケージ単位での導入を推奨しています。ウイング翼角の調整範囲は、Ventus 1が0°(ルーバーなし)〜5°(ルーバー付)、Ventus 2が0°〜12°です。
データで見る効果
下のグラフは、各パッケージが純正(OEM)と比べてダウンフォース(上段)とドラッグ(下段)をどれだけ増減させるかを、速度ごとに示したものです。空力の力は速度の2乗に比例して増えるので、曲線は右に行くほど上がります。
帯の幅は、ウイング翼角(AoA)の調整範囲を表しています。翼角を変えることで、ドライバーの好みに合わせて空力バランスを調整できます。時速160km(100mph)付近では、Ventus 2は純正比で400lbs(約180kg)ほどのダウンフォースを上乗せします。
どちらの構成も、ダウンフォースの増え方に比べてドラッグの増加は小さく、走行会からタイムアタックまで使える特性です。
ボルテックスジェネレーターの効果
M2では、大型フードルーバーから抜けた空気がリアウインドウ上の流れを剥がすため、そのままではリアウイングの効率が落ちます。ボルテックスジェネレーター(VG)はこの流れを再びボディに沿わせ、ウイングの働きを取り戻す部品です。Ventus 2(翼角5°)では次の改善が確認されています。
| 項目(VGの有無で比較) | 変化 |
|---|---|
| ドラッグ | −2% |
| ダウンフォース | +5% |
Ventus 2、ウイング翼角5°時。同じダウンフォースでよければ翼角を寝かせられるため、ドラッグとバランスはさらに改善できます。
部品ごとの解説
ダイブプレーン(カナード) Ventus 1・2
最低地上高を変えずに、フロントのダウンフォースを少し足したいときに向く部品です。板そのものが受ける力(上面が高圧、下面が低圧)は大きくなく、主な役割は車体まわりの流れを整えることです。意図的に作る渦がフェンダー内の空気を引き抜き、ボディに働くリフトを減らします。

素材:2×2ツイルカーボン(クリアコート仕上げ)/取付:位置決めテンプレート付属
フロントスプリッター(エンドプレート付) Ventus 2
フロントのダウンフォースの中心となる部品です。上面にかかる高圧が板を押し下げ、下面はウイングと同じく負圧で車体を引き下げます。力の大きさでは下面の働きのほうが上回ります。解析はスプリッター単体ではなく、エンドプレートまで含めた装着状態で行われています。
G87は下向きのオイルクーラーを持つため、スプリッターには後方へ排出するダクトを設け、冷却風の通り道を確保しながら性能への影響を抑えています。高負荷の走行が続く場面(特に夏場や、付属のブロックオフプレートで開口を塞いで性能を最大にした場合)では、油温のモニタリングを推奨します。

素材:カーボンポリウィーブ(モータースポーツグレードの複合材。通常のカーボンが衝撃で割れる場面でも破断しにくい)/付属:ブロックオフプレート
サイドスプリッター Ventus 2
車体上面側の高圧の空気が、側面から床下へ回り込むのを抑える部品です。直進時だけでなく、旋回中や高ヨー角時の床下の流れを整えることを重視して形が決められています。増えるダウンフォースは車体中央付近に集中するため、前後バランスへの影響はわずかです。

素材:カーボンポリウィーブ/取付:純正サイドスカート部に付属ハードウェアでボルト留め
UCWリアウイング Ventus 1・2
リアに大きなダウンフォースが必要な場合の中心になる部品です。翼型はCFDで設計したのち風洞で仕上げたもので、働きの大半は下面(負圧面)が担います。上面もダウンフォースを生みますが、下面ほどではありません。
トランクマウントは6061アルミの削り出しで、下面は純正トランクリッドの曲面に合わせて加工されています。ヒンジ側の受けとステンレス製スタンドオフでトランクリッドを挟み込む構造のため、パネルの変形を防ぎながら高い剛性を確保しています。メーカーは、これまで作ったUCWキットの中でも剛性の高い部類だとしています。

素材:2×2ツイルカーボン(クリアコート仕上げ)/マウント:6061削り出しトランクマウント+ステンレススタンドオフ
カーボンフードルーバー Ventus 1(推奨)・2
エンジンルームの熱と圧力をボンネットの上へ抜く部品です。冷却効率と補機類の寿命を高めると同時に、エンジンルーム内の圧力を逃がしてフロントのダウンフォースを増やします。空力バランスはフロント27%から42%へ改善します(UCW翼角5°時)。
開口部は、ボンネット裏の構造をほとんど切らずに済み、なおかつフード上の圧力が低く空気がよく抜ける場所に配置されています。3Dスキャンデータをもとに作っているため、フードの曲面に純正部品のようにフィットします。実走テストでも、エンジンルーム温度の大幅な低下が確認されています。

素材:2×2ツイルカーボン(クリアコート仕上げ)/取付:位置決めテンプレート付属
ボルテックスジェネレーター Ventus 1・2
ルーフ後端に並ぶ小さなフィンです。フードルーバーから抜けたエネルギーの低い空気は、リアウインドウ上で流れを剥がし、リアウイングの効率を下げます。VGは小さな渦を作って流れを再びボディに沿わせ、ウイングの働きを取り戻します。効果は「ボルテックスジェネレーターの効果」の表のとおり、同じ翼角でドラッグ−2%、ダウンフォース+5%です(Ventus 2、5°時)。


素材:2×2ツイルカーボン、またはカーボン/ナイロン3Dプリント
ウインドディフレクター オプション
窓を開けて走ったときに起きる、ボボボという不快な風の共鳴(バフェッティング)は、G87では特に出やすい症状です。ディフレクターは窓の手前で気流をわずかに乱し、共鳴を止めます。空力部品というより快適装備ですが、資料ではCFDでその働きが検証されています。

素材:2×2ツイルカーボン、またはカーボン/ナイロン3Dプリント
CFD画像の読み方
このページやメーカー資料に出てくる解析画像は、色の意味を知っておくと読みやすくなります。主な表示方法は次のとおりです。
| ストリームライン(流線) | 空気の通り道を線で表したもの。色は流速で、赤系が速く、青系が遅い流れです。図5・図6のように、部品が流れをどこへ導いているかを見るのに使います。 |
|---|---|
| CpZ(上下方向の圧力分布) | 車体のどこでダウンフォースやリフトが生まれているかを示します。青がダウンフォース、赤がリフトの発生域です。図7の青い面が、力を生んでいる場所です。 |
| LIC(表面の流れ) | 車体表面を流れる空気を、オイルを塗って流す試験のように描く方法です。図10・図11のように、流れが剥がれている場所(渦を巻いた暗い領域)を見つけるのに使います。 |
| CpT(総圧) | 気流に残っているエネルギーの量です。エンジンルームや車体を通ってエネルギーを失った空気の行き先を追うのに使います。 |
| Cp(圧力係数) | 大気圧を0とした相対的な圧力です。0より下が低圧(吸われる側)、上が高圧(押される側)。単位のない数なので、速度が変わっても比べられます。 |
| ポイント | 空力係数の増減を表す単位で、1ポイントは係数0.001です。CdやClの変化量を表すときに使います。 |
開発の裏付け
実車スキャンから作った解析モデル
解析の精度は、もとになるモデルの精度で決まります。VERUSはM2の実車を自社で3Dスキャンし、最も誤差の大きい箇所でも1mm未満のCADモデルを作りました。貫通ダクトやラジエーターダクトまで解析モデルに含めています。

直進だけを前提にしないCFD
解析には有限体積法CFDのOpenFOAM v2106(SIMPLE法、K-Omega SST乱流モデル)を使っています。実際の走行ではほぼ起こらない完全な直進状態ではなく、0.5°のヨー角を基本条件とし、複数の車高とヨーレートで旋回中の状態も解析しています。フロントに並ぶ5つの冷却器は、すべて多孔質体としてモデル化されています。
風洞と実走で確認してから製品化
CFDで設計した形状を、風洞実験の知見と過去の実績のある設計をもとに詰め、最後にプロドライバーがサーキットで確認しています。純正部品並みのフィットを目標にしており、エンジンには手を入れないため、メーカー保証もそのまま残ります。
構成のご相談
走り方(街乗り中心、走行会、タイムアタック)と現在の仕様をお知らせいただければ、上のデータをもとに構成をご提案します。単品から段階的に導入するご相談もお受けしています。
適合:BMW M2(G87)。図版と数値はVERUS Engineering発行「Performance of Verus Engineering Ventus Packages — BMW G87 M2 Platform」(2024年2月13日)によるもので、解説は同資料をもとにRK-ONLINEが構成・翻訳しました。