BMW M2(G87) VERUS ENGINEERING Ventusエアロ解説
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ヴェルスエンジニアリング VENTUS AERO PACKAGE 1–2
Ventusパッケージは、米Verus EngineeringがBMW M2(G87)のために開発した2段階のエアロキットです。実車の3Dスキャンから起こしたCFD解析、風洞実験、プロドライバーによる実走テストを重ねて設計されており、各部品の効果は数値で公開されています。
G8X系Mはエンジン下にオイルクーラーを持つため、大型のフードルーバーで熱と圧力を抜き、その代償をボルテックスジェネレーターで取り返す——という車種専用の設計が特徴です。このページでは、メーカー発行の技術資料(2024年2月版)に掲載されたデータと解析画像を、日本のユーザー向けに読み解いていきます。
パッケージ構成
VENTUS 1
翼から始める
サーキットを走り始めた方向け。ダイブプレーンとUCWウイングで前後に荷重を作り、ボルテックスジェネレーターでウイングの働きを底上げする構成です。フードルーバーの追加をメーカーは推奨しています。
商品ページへ構成部品
- ダイブプレーン(カナード)
- UCWリアウイング
- ボルテックスジェネレーター
- カーボンフードルーバー(推奨)
- ウインドディフレクター
※フードルーバーはVentus 1では推奨オプション(ダウンフォース増と空力バランス改善)。ウインドディフレクターは全仕様に追加できます。
構成部品
- Ventus 1 の全部品
- フロントスプリッター(エンドプレート付)
- サイドスプリッター
- カーボンフードルーバー
- ウインドディフレクター
構成一覧
| 部品 | VENTUS 1 | VENTUS 2 |
|---|---|---|
| ダイブプレーン(カナード) | ● | ● |
| UCWリアウイング | ● | ● |
| ボルテックスジェネレーター | ● | ● |
| カーボンフードルーバー | 推奨OPTION | ● |
| フロントスプリッター(エンドプレート付) | - | ● |
| サイドスプリッター | - | ● |
| ウインドディフレクター | OPTION | OPTION |
各部品は単品でも装着できますが、前後の空力バランスを崩さないため、メーカーはパッケージ単位での導入を推奨しています。ウイング翼角の調整範囲はVentus 1が0°(ルーバー無)〜5°(ルーバー付)、Ventus 2が0°〜12°です。
データで見る効果
下のグラフは、各パッケージが純正(OEM)と比べてどれだけダウンフォース(上段)とドラッグ(下段)を増減させるかを、対気速度ごとに示したものです。空力の力は速度の2乗に比例して増えるため、曲線は右肩上がりのカーブを描きます。
帯の幅はウイング翼角(AoA)の調整範囲を表します。翼角を動かすことで、ドライバーの好みに合わせて空力バランスを微調整できるということです。時速160km(100mph)付近では、Ventus 2は400lbs(約180kg)級のダウンフォースを純正比で上乗せします。
いずれの構成もダウンフォースの増加に対してドラッグの増加は小さく抑えられており、走行会からタイムアタックまで使える特性です。
ボルテックスジェネレーターの効き方 — M2は大型フードルーバーで抜いた空気がリアウインドウ上の流れを剥がし、そのままではリアウイングの効率が落ちます。VGはこの流れを再付着させてウイングの働きを取り戻す部品で、Ventus 2(翼角5°)では次の改善が確認されています。
| 項目(VG有無の比較) | 変化 |
|---|---|
| ドラッグ | −2% |
| ダウンフォース | +5% |
Ventus 2・ウイング翼角5°時。同じダウンフォースで良ければ翼角を寝かせられるため、ドラッグとバランスはさらに改善できます。
部品ごとの解説
4.1ダイブプレーン(カナード)V1/V2+
最低地上高を変えずにフロントのダウンフォースを少し足したい、という場合に向く部品です。板そのものが空気を受けて発生する力は限られており(上面が高圧・下面が低圧)、本来の仕事は車体まわりの流れを整えること。意図的に作り出した渦がフェンダー内の空気を抜き、ボディに働くリフトを減らします。
4.2フロントスプリッター(エンドプレート付)V2+
前まわりの主役です。上面に載る高圧が板を押し下げ、下面はウイングと同じく負圧で車体を引き下げます。発生源としては下面の仕事が上回ります。解析はスプリッター単体ではなく、エンドプレートまで含めた実装状態で行われています。
G87は下向きのオイルクーラーを持つため、スプリッターには後方排出ダクトを設け、冷却風の通り道を確保しながら性能への影響を抑えています。高負荷走行が続く場面(特に夏場や、付属のブロックオフプレートで開口を塞いで性能を最大化した場合)は油温のモニタリングを推奨します。
4.3サイドスプリッターV2+
車体上面側の高圧な空気が側面から床下へ回り込むのを抑える部品です。直進時だけでなく、旋回中・高ヨー角時の床下気流を整えることを重視して形状が決められています。増えるダウンフォースは車体中央付近に集中するため、前後バランスへの影響はわずかです。
4.4UCWリアウイングV1/V2+
リアに大きなダウンフォースが欲しい場合の核となる部品です。翼型はCFDで設計したのち風洞で熟成させたもので、仕事の大半は下面(負圧面)が担います。上面もダウンフォースを生みますが、下面ほどではありません。
トランクマウントは6061アルミ削り出しで、下面は純正トランクリッドの曲面に合わせて加工。ヒンジ側の受けとステンレス製スタンドオフでトランクリッドを挟み込む構造のため、パネルの変形を防ぎながら高い剛性を確保しています。メーカー自身が「これまで作ったUCWキットの中で最も剛性が高い部類」と述べる仕上がりです。
4.5カーボンフードルーバーV1推奨/V2+
エンジンルームの熱と圧力をボンネット上へ抜く部品です。冷却系の効率と補機類の寿命を高めると同時に、エンジンルーム内の圧力を逃がすことでフロントのダウンフォースを追加。空力バランスはフロント27%から42%へと大きく改善します(UCW翼角5°時)。
開口部は、ボンネット裏の構造をほとんど切らずに済み、かつフード上の圧力が低い(=よく抜ける)場所を選んで配置。3Dスキャンデータから起こしているため、フードの曲面に純正のようにフィットします。実走テストでもエンジンルーム温度の大幅な低下が確認されています。
4.6ボルテックスジェネレーターV1/V2+
ルーフ後端に並ぶ小さなフィンです。フードルーバーで抜いた低エネルギーの空気はリアウインドウ上で流れを剥離させ、リアウイングの効率を下げてしまいます。VGは意図的に小さな渦を作って流れを再付着させ、ウイングの働きを取り戻します。結果は上の「03 データで見る効果」の通り、同じ翼角でドラッグ−2%・ダウンフォース+5%(Ventus 2・5°時)。
4.7ウインドディフレクターOPTION+
窓を開けて走ったときの「ボボボ…」という不快な風の共鳴(バフェティング)は、G87では特に出やすい症状です。ディフレクターは窓の上流で気流をわずかに乱すことで共鳴を断ち切ります。空力部品というより快適装備ですが、資料ではCFDでその作動が検証されています。
CFD画像の読み方
本ページやメーカー資料に登場する解析画像は、色の意味が分かると一気に読めるようになります。主な可視化手法をまとめました。
STREAMLINEストリームライン(流線)
空気の通り道を線で表したもの。色は流速を示し、赤系が速く、青系が遅い流れです。FIG.05・06のように、部品が流れをどこへ導いているかを読むのに使います。
CpZ上下方向の圧力分布
車体表面のどこがダウンフォース/リフトを生んでいるかを示します。青=ダウンフォース発生域、赤=リフト発生域。FIG.07の「青く染まった面」が仕事をしている場所です。
LIC表面流れの可視化
車体表面を流れる空気を「オイル塗布試験」のように描く手法。FIG.10・11のような画像で、流れが剥がれている場所(渦を巻いた暗い領域)を見つけるのに使います。
CpT総圧(気流のエネルギー)
気流が持つエネルギーの残量。エンジンルームや車体を通過してエネルギーを失った空気の行き先を追うのに使います。
Cp圧力係数
大気圧を0とした相対圧力。0より下が低圧(吸われる側)、上が高圧(押される側)です。無次元数なので速度が変わっても比較できます。
POINTSポイント
空力係数の増減を表す単位で、1ポイント=係数0.001。CdやClの変化量を語るときに使われます。
開発の裏付け
実車スキャンから作られた解析モデル
解析は入力が悪ければ結果も悪くなります。VerusはM2の実車を自社で3Dスキャンし、誤差が最も大きい箇所でも1mm未満というCADモデルを製作。貫通ダクトやラジエーターダクトまで解析モデルに含め、精度を高めています。
「直進」を前提にしないCFD
解析には有限体積法CFDのOpenFOAM v2106(SIMPLE法、K-Omega SST乱流モデル)を使用。現実の走行でほぼ起こらない完全な直進気流ではなく、0.5°のヨー角を基本条件とし、複数の車高・ヨーレートで旋回状態も解析しています。フロントに並ぶ5つの冷却器はすべて多孔質流体としてモデル化されています。
風洞と実走で確認してから製品化
CFDで設計した形状は風洞実験の知見と過去の実績設計で熟成させ、最終的にプロドライバーのサーキット実走で確認。仕上げは純正並みのフィット感を目指しており、エンジンに手を入れないため純正保証もそのまま残ります。
どのパッケージにするか迷ったら
走行ステージ(街乗り中心か、走行会か、タイムアタックか)と現在の仕様をお知らせいただければ、上記のデータをもとに構成をご提案します。単品からの段階的な導入のご相談も可能です。
適合:BMW M2(G87)。本ページの図版・数値はVerus Engineering発行「Performance of Verus Engineering Ventus Packages — BMW G87 M2 Platform」(2024年2月13日)より。解説は同資料に基づきRK-ONLINEが構成・翻訳したものです。