86(ZN6)/BRZ(ZC6)用 Verus Ventusエアロパッケージ

RK-ONLINE / VERUS ENGINEERING FOR TOYOTA 86 (ZN6) / SUBARU BRZ (ZC6)

ヴェルスエンジニアリング VENTUS AERO PACKAGE 1–4

Ventusパッケージは、米Verus Engineeringが先代86/BRZ、いわゆるFT86プラットフォーム(トヨタ 86:ZN6/スバル BRZ:ZC6/サイオン FR-S)のために開発した4段階のエアロキットです。現行GR86(ZN8)用とは別物ですのでご注意ください。CFD解析に加え風洞実験、プロドライバーによるサーキット実走テストを経て設計されており、部品ごとの働きが解析画像とデータで公開されています。

このページでは、メーカー発行の技術資料(2025年12月版)に掲載されたデータと解析画像を、日本のユーザー向けに読み解いていきます。

フロントスプリッター(実装状態)の空力効率 L/D26
サイドスプリッターのダウンフォース追加(ドラッグ増なし)+6ポイント
床下パネル2枚によるCd低減8ポイント
UCWスワンネック化によるダウンフォース増(翼角12°・100mph)+14%
同・ドラッグ低減−23%
スワンネックマウントのUCWウイングを装着した86/BRZのCFD解析画像
FIG.01スワンネック仕様UCWウイング(Ventus 4)まわりの流速解析。翼下面の直後に強い減速域(青)が現れており、下面が大きな負圧=ダウンフォースを生み出していることが分かります。
01

パッケージ構成

VENTUS 1

床下から始める

ストリート中心の方向け。外観の変化はダイブプレーンのみに抑え、床下の整流でドラッグを抑えつつ安定性(ダウンフォース)を足していく入門構成です。

商品ページへ

構成部品

  • ダイブプレーン(カナード)
  • トランスミッショントンネルカバー
  • リアディフューザー
  • リアサスペンションカバー
Ventus 1のフロントビュー。ダイブプレーンを青色表示
FIG.03Aフロントビュー。バンパー両脇の青いパーツがダイブプレーン。外観の変化は最小限です。
Ventus 1の床下ビュー。装着部品を青色表示
FIG.03B床下ビュー。青が装着部品で、ディフューザー、トンネルカバー、サスペンションカバーと床下中心の構成です。

VENTUS 2

前を仕上げる

ウイングはまだ大げさ、でも前の接地感が欲しい方向け。地面効果で働くスプリッターとダックテールスポイラーを加え、前後バランスを保ったまま荷重を積み増します。

商品ページへ

構成部品

  • Ventus 1 の全部品
  • フロントスプリッター
  • ダックテールスポイラー
Ventus 2のフロントビュー。スプリッターとダックテールスポイラーを青色表示
FIG.04Aフロントビュー。サポートロッド付きのスプリッターと、トランク後端のダックテールスポイラーが加わります。
Ventus 2の床下ビュー。装着部品を青色表示
FIG.04B床下ビュー。Ventus 1の床下部品はそのままに、スプリッター下面という新しい負圧面が加わります。

VENTUS 3

前後に翼を持つ

街乗りとサーキットを一台でこなす方向け。低ドラッグ志向の高効率リアウイングを軸に、サイドスプリッターとスプリッターエンドプレートで前後の荷重を底上げします。

商品ページへ

構成部品

  • Ventus 2 の全部品
  • 高効率リアウイング
  • スプリッターエンドプレート
  • サイドスプリッター
Ventus 3のフロントビュー。高効率ウイングまで含む装着部品を青色表示
FIG.05Aフロントビュー。スプリッター+エンドプレート、サイドスプリッター、ダックテール、高効率ウイングが確認できます。
Ventus 3の床下ビュー。装着部品を青色表示
FIG.05B床下ビュー。サイドシル沿いに追加されたサイドスプリッターで、床下の負圧を側面から守る構成です。

VENTUS 4

タイムを削りにいく

競技・タイムアタック志向の方向け。リアの主役を最大ダウンフォース志向のUCWウイングに置き換えた最上位構成です。ウイングマウントはボトム/スワンネックの2仕様。

商品ページへ

構成部品

  • フロントスプリッター
  • スプリッターエンドプレート
  • ダイブプレーン(カナード)
  • サイドスプリッター
  • リアディフューザー
  • UCWリアウイング(ボトム/スワンネック)
  • トランスミッショントンネルカバー
  • リアサスペンションカバー

※Ventus 4はダックテールスポイラーを含まず、リアはUCWウイングが受け持ちます。

Ventus 4のフロントビュー。UCWウイングまで含む装着部品を青色表示
FIG.06Aフロントビュー。大型のUCWウイングと、Ventus 3譲りの前まわり・床下・側面の構成です。
Ventus 4の床下ビュー。装着部品を青色表示
FIG.06B床下ビュー。床下・前後・側面まで、車体全体で空力を作る最大構成です。
02

構成一覧

部品 VENTUS 1 VENTUS 2 VENTUS 3 VENTUS 4
ダイブプレーン(カナード)
トランスミッショントンネルカバー
リアディフューザー
リアサスペンションカバー
フロントスプリッター
ダックテールスポイラー
スプリッターエンドプレート
サイドスプリッター
高効率リアウイング
UCWリアウイング(ボトム/スワンネック)

各部品は単品でも装着できますが、前後の空力バランスを崩さず最大の効果を得るため、メーカーはパッケージ単位での導入を推奨しています。

03

データで見る効果

下のグラフは、各パッケージが純正(FR-S)と比べてどれだけダウンフォース(青線)とドラッグ(黒線)を増やすかを、対気速度ごとに示したものです。空力の力は速度の2乗に比例して増えるため、メーカーは「時速◯kmで◯kg」という一点の数値ではなく、曲線での公開にこだわっています。

注目してほしいのは黒のドラッグ曲線群。どのパッケージもゼロ付近に張り付いており、青のダウンフォース曲線との差=空力効率の高さがこのキットの設計思想です。とくにVentus 1はダウンフォースを足しながらドラッグ増がほぼゼロに収まっています。

ウイング角度はVentus 3が6°、Ventus 4が8°での測定値。Ventus 4は160mph(約257km/h)で1,000lbs(約450kg)を超える純正比ダウンフォースを上乗せします。

Ventusパッケージ別のダウンフォースとドラッグの速度特性グラフ
FIG.02純正比のダウンフォース増分(青)とドラッグ増分(黒)。横軸は対気速度[mph]、縦軸は力[lbs]。1 lbs≒0.45kg、100mph≒161km/h。ウイング角度はVentus 3=6°、Ventus 4=8°。

ボトムマウントとスワンネックの違い — Ventus 4のUCWウイングは2種類のマウントが選べます。ウイングの仕事の大半は下面(負圧面)が担うため、かさばるマウントを影響の小さい上面側へ移し、支柱を翼の前方へずらしたスワンネックの方が下面の流れをきれいに保てます。Gridlifeでレコードを持つPeter Granberg氏のClub TR BRZを解析した際は、同じ翼角12°・100mph(約161km/h)で次の差が確認されました。

UCWウイング(翼角12°・100mph) ダウンフォース ドラッグ
スワンネック(ボトムマウント比) +14% −23%

スワンネックマウントの支柱は、前縁を丸めたラウンド形状・後縁をナイフエッジとした低ドラッグ断面です。

04

部品ごとの解説

4.1リアディフューザー&サスペンションカバーV1/V2/V3/V4+

市販車の空気抵抗の多くは、車体後方にできる低圧の渦(ウェイク)が車を後ろへ引っ張る「圧力抵抗」です。ディフューザーは床下の空気を後方のウェイク領域へ導いてこの渦を埋め、ダウンフォース(安定性)を得ながら車両全体のドラッグも下げる——じつはストリートカーにこそ向いた部品です。ディフューザー表面だけを見ると抵抗が増えているように見えますが(誘導抵抗)、車両全体では逆にドラッグが減る、というのが解析のポイントです。

スロート(絞り部)はメイン+セカンドの2段構成。Verusのリアディフューザーの代名詞になっている設計です。LICプロットでは、外側セクションも中央セクションも流れが剥がれず表面に付着していることが確認できます。

車体後方のウェイク領域を可視化したCFD画像
FIG.07総圧(CpT)プロット。車体後方の青い塊が「ウェイク領域」で、これを小さく埋めるほどドラッグが減ります。ディフューザーは床下からの気流をこの領域へ送り込みます。
ディフューザー単体の圧力分布
FIG.08ディフューザー面の圧力分布。前縁側の濃い青がスロート部の強い負圧で、ここが後輪付近の路面を「吸って」います。
床下後半のLICプロット
FIG.09ウォールシアのLICプロット(床下後半)。油流し試験のように表面の流れを可視化したもので、ディフューザー各セクションに流れが付着しています。
4.2フロントスプリッターV2/V3/V4+

前まわりの主役です。見た目はただの平板ですが、路面との隙間で働く地面効果によって大きなフロントダウンフォースを発生させます。解析はスプリッター単体ではなく、サポートロッドまで含めた実装状態のアセンブリで実施。その状態での空力効率はL/D=26と、ダウンフォースを生む部品としては極めて効率的です。

前縁で生まれた渦が外側後方へ流れながら大きな負圧域を作り、中央部は流れが付着したまま仕事をする——という下面の使い方まで、LIC・ストリームライン両方のプロットで確認されています。

スプリッターを含む床下前方の圧力分布を示すCFD画像
FIG.10床下の圧力(Cp)分布。最前部のスプリッター下面が濃い青=負圧のピークになっており、ここがフロント荷重の発生源です。
4.3ダイブプレーン(カナード)V1/V2/V3/V4+

「ダイブプレーンは板が受ける風で荷重を作る」と思われがちですが、板自体が生む力はごく一部。本来の仕事は車体まわりの流れの制御です。意図的に作り出した渦がフェンダー内の空気を引き抜き、ボディに働くリフトを減らします。取付位置がシビアなため、位置決め用の専用テンプレートが用意されています。

ダイブプレーンが作る渦を可視化したCFD画像
FIG.11ストリームライン(流線)プロット。色は流速で暖色ほど速い流れ。ダイブプレーンを起点にした渦がフェンダー内の空気を外へ引き抜いていく様子が読み取れます。
取付 位置決めテンプレート付属(位置と角度が性能を左右します)
4.4スプリッターエンドプレートV3/V4+

スプリッターの左右に立てる板で、ダイブプレーンとはまったく別の原理で働きます。役割はスプリッターの「増幅器」。下面の負圧をさらに深め、上面の圧力を高めることで、わずかなドラッグ増と引き換えにフロントダウンフォースを大きく積み増します。

エンドプレート無しのスプリッター下面圧力分布
FIG.12Aエンドプレート無し。スプリッター下面の負圧(青)は前縁付近にとどまります。
エンドプレート有りのスプリッター下面圧力分布
FIG.12Bエンドプレート有り。外周に沿って濃紺の負圧域が広がり、同じスプリッターがより強く路面を吸っています。
4.5高効率リアウイングV3+

FT86のようなパワーの限られた車のために開発された低ドラッグウイングです。翼型はアジョイント(随伴)最適化ソルバーで設計されており、リアウイングとしては非常に効率の良いダウンフォースを生みます。仕事の大半は下面が担当:下面のCpは−1以下まで下がる一方、上面は0.6を超えず、「下面が上面より圧倒的に働く」翼になっています。

翼の下面側は上面より流速が速く、この速度差が上下面の圧力差=ダウンフォースを生みます。さらにウイングは車体後方の気流の向きを「下向き」から「まっすぐ後ろ」へ変えており、これも荷重発生の証拠です。

高効率ウイング下面の圧力分布を後方から見たCFD画像
FIG.13後方から見た圧力分布。ウイング下面(負圧面)が濃紺に染まっており、ここがリアを路面へ引き付ける主発生源です。
車体中心断面の流速分布
FIG.14車体中心断面の流速。ウイング下面側の流れが速く(明色)、翼を過ぎた気流が後方へまっすぐ整流されています。
高効率ウイングの翼角別ダウンフォース特性グラフ
FIG.15高効率ウイングの翼角別ダウンフォース(0〜15°)。160mph時で約250〜470lbs。翼角で荷重を細かく調整できます。
4.6UCWリアウイング(ボトム/スワンネック)V4+

リアに大きなダウンフォースが欲しい場合はこちら。CFDで設計・最適化したのち風洞で熟成させ、最終確認はサーキット実走で行われた、資料中でもっとも開発工数の掛かったウイングです。こちらも仕事の主役は下面で、Cpは下面が−1以下、上面は0.6以下という配分です。

マウントはボトムとスワンネックの2種。スワンネックはマウントを上面側へ移して支柱を翼の前方に配置するため、負圧面である下面を乱さず、支柱付近の流れの付着が改善します。効率差の実測値は「03 データで見る効果」の表をご覧ください。

UCWウイング下面の圧力分布を後方から見たCFD画像
FIG.16ボトムマウント仕様の圧力分布(後方視)。ウイング下面全体が濃紺の強い負圧域です。スワンネック化ではこの面をさらにきれいに使えます。
UCWウイングの翼角別ダウンフォース・ドラッグ特性グラフ
FIG.17UCWウイングの翼角別特性(0〜15°)。200mph時のダウンフォースは約1,000lbs級まで伸び、ドラッグ(細線)との差=効率も一目で分かります。
4.7サイドスプリッターV3/V4+

車体側面から床下へ回り込む空気を抑える部品です。効果は+6ポイントのダウンフォース、ドラッグ増はゼロ。しかも旋回中のようにヨー角が付いた状態ではさらに効きが増します。増えるダウンフォースは車体中央付近に集中するため、前後の空力バランスを崩さないのも美点です。

サイドスプリッター装着車の床下圧力分布
FIG.18床下の圧力分布(後方下から)。サイドシル沿いのスプリッターが側面からの空気の巻き込みを遮り、床下の負圧を保ちます。
4.8トランスミッショントンネルカバーV1/V2/V3/V4+

純正の床下に残る大きな開口部を2枚のフラットパネルで塞ぎ、床下の乱れた空気を減らす部品です。効果はCd(抗力係数)8ポイントの低減。さらに車体に前傾姿勢(レーキ)が付いている場合は、床下全体が緩いディフューザーとして働くため、ダウンフォースも増加します。

05

CFD画像の読み方

本ページやメーカー資料に登場する解析画像は、色の意味が分かると一気に読めるようになります。主な可視化手法をまとめました。

STREAMLINEストリームライン(流線)

空気の通り道を線で表したもの。色は流速を示し、赤系が速く、青系が遅い流れです。FIG.11のように、部品が流れをどこへ導いているかを読むのに使います。

CpZ上下方向の圧力分布

車体表面のどこがダウンフォース/リフトを生んでいるかを示します。青=ダウンフォース発生域、赤=リフト発生域。「青く染まった面」が仕事をしている場所です。

CpX前後方向の圧力分布

ドラッグ(抵抗)がどこで発生しているかの可視化。赤が抵抗を生む場所、青は逆に車を前へ押す(推力側の)場所を表します。ディフューザーの「見かけの抵抗」を読むのに登場しました。

CpT総圧(気流のエネルギー)

静圧と動圧の合計=気流が持つエネルギーの残量。FIG.07のように、車体後方のウェイク(エネルギーを失った空気の塊)を可視化するのに使います。

Cp圧力係数

大気圧を0とした相対圧力。0より下が低圧(吸われる側)、上が高圧(押される側)です。無次元数なので速度が変わっても比較できます。

LIC / WALL SHEAR表面流れの可視化

ウォールシア(壁面せん断力)をLIC(線積分畳み込み)で描くと、油流し試験のような「表面の流れ模様」になります(FIG.09)。剥離の有無や実走テストとの照合に使われます。

POINTSポイント

空力係数の増減を表す単位で、1ポイント=係数0.001。「Cd8ポイント低減」は抗力係数が0.008下がったという意味です。

06

開発の裏付け

「直進」を前提にしないCFD

解析には有限体積法CFDのOpenFOAM V6(SIMPLE法、K-Omega SST乱流モデル、標準壁条件)を使用し、車両全体を丸ごと計算しています。条件は現実の走行でほぼ起こらない完全な直進気流ではなく、0.5°のヨー角を付けた気流。実際の路上で車が受ける風に近い状態で評価されています。

フルカーCFD解析のストリームライン画像
FIG.19フルカー解析のストリームライン。床下・フェンダー内・ウイングまわりまで一体で解いているため、部品同士の相互作用も評価できます。

CFD・風洞・実走の三段構え

開発はCFDだけで完結していません。とくにUCWウイングはCFDで設計・最適化した後に風洞実験で熟成させ、最終テストはサーキットで実施。プロドライバーによる実走テストと、過去の開発で実証済みの設計手法が組み合わされています。

純正並みのフィットと保証

各部品は純正同様のフィット感で装着できるよう設計されており、エンジンに手を入れないため純正保証もそのまま。単品での導入も可能ですが、ラップタイム短縮を狙うならバランスの取れたパッケージ単位が最も効果的です。

どのパッケージにするか迷ったら

走行ステージ(街乗り中心か、走行会か、タイムアタックか)と現在の仕様をお知らせいただければ、上記のデータをもとに構成をご提案します。単品からの段階的な導入のご相談も可能です。

適合:トヨタ 86(ZN6)/スバル BRZ(ZC6)/サイオン FR-S。現行GR86(ZN8)/BRZ(ZD8)には適合しません。本ページの図版・数値はVerus Engineering発行「Performance of Verus Engineering Ventus Packages」FRS/BRZ/GT86 Platform(2025年12月2日版)より。解説は同資料に基づきRK-ONLINEが構成・翻訳したものです。