ウィング周りの圧力係数分布(CFD解析)

【翻訳】ウィングは取付高さで効きが変わる|VERUSのCFD検証「Location Matters」

同じリアウィングでも、取り付ける高さで発生するダウンフォースは大きく変わります。では、どの高さが最も効くのか――勘ではなくデータで答えたのがこの検証です。本記事は、VERUS公式ブログ「Location Matters, Why Guess?」(2017年9月25日)を、日本正規代理店RK-ONLINEが翻訳・編集したものです。掲載画像はすべてVERUS Engineering公式ブログより。

検証の概要

空力パーツの開発では、「どこに取り付けるか」が性能を左右します。VERUSはこれを証明するため、ウィングを地面から様々な高さに置いてCFD解析を行いました。地上高さ5mmから5mm刻みで30ケースを解析し、ここでは代表的4つの高さ(5mm、35mm、95mm、155mm)の結果を見ていきます。解析はすべて流速45m/s(約162km/h)で実施されています。

地上高さ5mm:低すぎると「チョーク」する

ウィングが地面に近すぎると、流れは「チョーク(閉塞)」します。チョークとは、主流の速度をいくら上げてもウィング下面の流速がそれ以上増えなくなる状態です。流速が落ちると圧力は上がり、ダウンフォースを作るうえでは逆効果です。圧力係数(Cp)のプロットを見ると、翼の前方に赤い領域=大きなよどみ領域(流れがほぼ止まっているエリア)が発生しているのが分かります。

地上高さ5mmのウィング圧力係数プロット

地上高さ5mmの圧力係数プロット。翼前方の赤い領域が巨大なよどみ領域

地上高さ35mm:大幅に改善

35mmに上げると、流速・圧力ともに大きく改善します。よどみ領域は大幅に縮小し、翼の下面には低圧領域(紫色)が広がります。地面との隙間が広がったことで、より多くの空気が翼の下を通り、ダウンフォースを生み出せるようになるためです。

地上高さ35mmのウィング圧力係数プロット

地上高さ35mm。よどみ領域が縮小し、翼下面の低圧領域(紫)が拡大

地上高さ95mm:ダウンフォース最大

このウィングが最大ダウンフォースを発生したのは地上高さ95mmでした。翼下面の低圧領域が最も大きく、よどみ点周りの高圧領域は縮小しています。ただし重要なのは、最大ダウンフォースの高さ=最大効率(L/D)の高さではないという点です。

地上高さ95mm(最大ダウンフォース)のウィング圧力係数プロット

地上高さ95mm。翼下面の低圧領域が最大に

地上高さ155mm:グランドエフェクトが薄れる

155mmでは、95mmに比べて翼下面の低圧領域が減少します。これはウィングと地面の相互作用が弱まったためです。ウィングが地面に適度に近いとき、翼と地面の間が「先細り→先広がりのダクト」のように働き、翼下面の流速が上がってダウンフォースが増えます。離れすぎるとこの効果が失われるのです。

地上高さ155mmのウィング圧力係数プロット

地上高さ155mm。95mmより翼下面の低圧領域が減少

データが示すもの:高さとダウンフォース・ドラッグの関係

ウィング高さとダウンフォース・ドラッグの関係グラフ

横軸:地上高さ(mm)、左縦軸:ドラッグ(N)、右縦軸:揚力(N)

30ケースの解析データから分かること:

  • ダウンフォースは5mm→95mmまで増加し、その先は減少。低すぎると大幅に損し、高すぎると地面効果が薄れる
  • ドラッグは高さを上げるほど減少し、やがて一定値に収束する
  • したがって最大効率(L/D最大)の高さは、最大ダウンフォースの高さとは別にある

原文はこう締めくくられています。「この解析はすべて45m/s(約162km/h)で行ったものだ。速度が変わったら?翼型ではない形状だったら?迎角が違ったら?――推測するな、解析せよ(Don't guess, analyze!)

この検証が意味すること

同じウィングでも、搭載高さだけでダウンフォースは大きく変わります。つまりウィングの性能は翼単体では決まらず、車両ごとの搭載位置まで含めた設計が必要だということです。VERUSが車種ごとに専用のマウント・ステーを設計しているのは、こうした解析の裏付けがあるからです。

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