VERUSエアロキットを装着したA90スープラのサーキット走行

サーキットで本当に効くエアロとは|ドレスアップエアロと機能性エアロの違い

サーキットでのタイム短縮を目的にエアロパーツを検討するとき、最初に知っておくべきことがあります。それは、市販のエアロパーツの多くは空力性能を検証されずに販売されているという事実です。見た目を変えるためのドレスアップエアロと、計測に基づいて開発された機能性エアロは、形が似ていても別物です。この記事では、その違いを空力の基礎から解説します。

ダウンフォースの基礎知識

エアロパーツの目的は、車体を路面に押し付ける力=ダウンフォースを発生させ、タイヤのグリップを高めることです。押さえておくべき性質は3つあります。

  • 空力の力は速度の2乗に比例する。100km/hで発生するダウンフォースは、50km/hのときの約4倍。つまりエアロの効果は高速コーナーほど大きく、街乗り速度ではほとんど体感できません。
  • ダウンフォースにはドラッグ(空気抵抗)が伴う。優れたエアロパーツとは、ダウンフォースが大きいだけでなく、ドラッグとの比率(揚抗比 L/D)が優れているものを指します。
  • 前後バランスがすべて。総量よりも、前後軸への配分がハンドリングを決めます。

見た目だけのエアロが逆効果になる理由

前後バランスの重要性は、エアロ選びで最も見落とされがちなポイントです。VERUS Engineeringは高速域での挙動不安定についてこう解説しています(※1)。

  • フロントだけ強化した場合(スプリッター等):リアの揚力が相対的に残り、高速コーナーでリアが流れるオーバーステアに。挙動が唐突になり、タイムどころか危険につながります。
  • リアだけ強化した場合(大型ウィング等):フロントの接地感が抜け、曲がらないアンダーステアに。ウィングのドラッグだけを支払って、コーナリング速度は落ちます。
VERUS製リアウィングを装着したポルシェ981ケイマンGT4

フロントの空力と釣り合うリアウィングを備えたポルシェ981ケイマンGT4(画像:VERUS Engineering)

つまり、単品で「効きそうな」パーツを付けるほど、車は遅く・危険になり得ます。解析なしで作られたエアロや、バランスを考えないパーツ選択が「エアロは飾り」と言われてきた原因です。

機能するエアロの開発に必要なもの

計測に基づくエアロ開発は、次のプロセスを踏みます(※2)。

1. 3Dスキャン

実車を3Dスキャナーで計測します。車両1台のスキャンには最大8時間。左右非対称な部分や床下形状まで正確にデータ化します。

ポータブル3Dスキャナーで車両を計測するVERUSのエンジニア

ポータブル3Dスキャナーによる実車計測(画像:VERUS Engineering)

2. CAD化

スキャンで得た点群データを、解析可能な形状データに変換します。車両全体では3〜5日を要する工程です。

3. CFD解析(数値流体力学)

仮想風洞の中で車両周りの空気の流れを計算し、揚力・ドラッグ・前後バランスを数値で評価します。VERUSのCFDは数千万セル規模のメッシュを使用し、タイヤの回転や、実走行で必ず発生する斜めからの風(ヨー角)まで再現します。数値上は不利になっても、実走条件に近い状態で設計するためです。

VERUSのCFD解析によるMK5スープラ周りの気流可視化

CFD解析によるMK5スープラ周りの気流可視化(画像:VERUS Engineering)

4. 風洞・実走での検証

CFDは設定を誤れば簡単に間違った答えを出します。だから解析結果を実測で検証する工程が不可欠です。

VERUSの解析は実測で検証されている

VERUS Engineeringは2019年、米インディアナポリスの風洞施設 ARC Indy で自社リアウィングの実測テストを行い、CFD解析値と比較・公開しました(※3)。

  • 風洞実測とCFD解析の差は2%以下
  • ダウンフォースの解析誤差は約129km/h(80MPH)時でわずか約1.5kg
  • 解析条件(乱流モデルK-Omega SST、4,000万セルのメッシュ)まで公開

この「解析→実測検証→データ公開」を2014年から続けている点が、VERUSと一般的なエアロメーカーの決定的な違いです。他社製パーツのCFD解析結果まで公開しており(※4)、発信しているのは宣伝ではなく計測結果です。

製品にもデータが反映されています。例えばMK5スープラ用UCWリアウィングは、ANSYS Adjointソルバーで翼型を最適化し、500lbs(約227kg)超のダウンフォースの発生と、それに耐える取付構造を持ちます。FL5シビックタイプR用AOAキットは、純正ウィングの迎角(-3.6°)を解析した上で、効率を損なわない最大角+3.6°までの調整幅を設計しています。

前後バランスを崩さない「パッケージ」という考え方

VERUSが車種ごとに「Ventusキット」という段階的なパッケージ(Ventus 1 → 2 → X)を用意しているのは、前述のバランス問題への回答です。各キットはフロントとリアの空力バランスを取った状態で構成されており、単品買いでバランスを崩す失敗を避けられます。装着順序も、バランス変化の少ないリアディフューザー+ダイブプレーンから始めることが推奨されています(※5)。

実際にVERUSエアロを装着した車両は、GRIDLIFEやタイムアタックイベントでレコードを更新しています(Peter Granberg選手のBRZ、スイスTrackparts GmbHのM2など)。

まとめ:エアロ選びのチェックリスト

サーキットでのタイム短縮を目的にエアロを選ぶなら、次を確認してください。

  1. CFD解析や風洞データを公開しているか(「レーシーな形」ではなく数値)
  2. 解析が実測で検証されているか
  3. 車種専用設計か(汎用品は個々の車の流れを考慮できません)
  4. 前後バランスを考えたパッケージ構成があるか
  5. ダウンフォースに耐える取付構造まで設計されているか

よくある質問

Q. エアロパーツは街乗りでも効果がありますか?

A. 空力の力は速度の2乗に比例するため、法定速度域での性能差はわずかです。効果を体感できるのは高速コーナーのあるサーキット走行です。

Q. まず1点だけ付けるなら何がいいですか?

A. 前後バランスへの影響が小さいリアディフューザーとダイブプレーンの組み合わせが推奨されています。大型ウィングやスプリッターの単品装着はバランスを崩す可能性があります。

Q. リアディフューザーにフラットな床下処理は必須ですか?

A. VERUSの解析では、ディフューザーは床下が整流されていない状態でも機能します(整流されているほうが性能は上がります)。

Q. VERUS製品は日本で購入できますか?

A. RK-ONLINEがVERUS Engineeringの日本正規代理店として全製品を取り扱っています。車種別の適合やキット構成についてはお気軽にお問い合わせください。


出典(VERUS Engineering公式)

本記事の画像はすべてVERUS Engineering公式サイトより。

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