【翻訳】CFD解析の舞台裏 — LMP1モデルによるバリデーション
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この記事では、CFDケースのセットアップ・実行・分析をどのように行っているかを、さらに踏み込んで紹介します。セットアップの完全な手順までは明かせませんが、方法論と結果への信頼を持ってもらえるだけの情報を提供します。そのために選んだのが、正確なデータを提供できる能力そのものを検証できる解析です。使用するのは、公表データが豊富にPerrinn製LMP1モデル。CADモデルはオンラインで購入でき、多数の既知値が公開されています。正しくセットアップできていれば、結果は既知データの数%以内に収まるはずです。本記事は、VERUS公式ブログ「A Look Inside Verus Engineering CFD - Validation」(2015年2月11日/Mike Villano)を、日本正規代理店RK-ONLINEが翻訳・編集したものです。(※原文には創業当初の旧社名Velox Motorsportsが登場しますが、現在のVERUS Engineeringと同一の会社です)
CADモデルの準備
まずCADモデルから作業を始めます。解析とモデルによっては、車両を半分にカットして解析を大幅に高速化できます。中心線で左右対称かつヨー試験をしない車両なら、計算資源と時間の節約に有効な手法です。それでも解析には、高性能デスクトップPCで通常1〖2日かかります。今回のLMP1は対称車両の直進シナリオなので、Y軸平面で半分にカットしました。

メッシュのセットアップ
次はCFDソフトへのモデル投入とメッシュのセットアップ。非常に重要で、時間のかかる工程です。新しい車両を解析する際はメッシュ感度スタディを実施し、目標精度に応じたメッシュサイズを決定します。解析には仮想風洞と、少なくとも1つのウェーク(伴流)細分化ゾーンが必要です。

仮想風洞と細分化ゾーンが固まったら、車両のサーフェスメッシュとボリュームメッシュを設定します。適切なメッシュ作成は簡単な作業ではなく、ケースの精度に直結します。ここを誤ると、結果は正確になりません。

物理セットアップ
次は物理条件の設定で、解析の中で最も難しい工程でしょう。「出力の質は入力の質次第」という格言がまさに当てはまります。CFDでは車は実際には動いておらず、ローリングロード(移動路面)式風洞のように、静止したLMP1モデルの上を空気が流れます。実世界を再現するため、風洞底面を入口流速と同じ速度で動かすローリングロードを設定し、さらにホイールもローリングロードと同速で回転するコンポーネントとして設定します。すべては可能な限り実世界に近い状況をシミュレートするためです。
解法には定常・定密度ソルバーを使用。乱流モデルは解析によって使い分けており、今回はrealizable k-epsilonを使用しました。解析を無限に回さないための停止基準も必要です。通常はリフト係数とドラッグ係数の収束を監視します。今回の解析は収束までに約2万5千回の反復計算を要しました。
ポストプロセシングと検証結果
最後の工程がポストプロセシングです。ここで、自社の数値データをPerrinnの公表値と照合します。結果、VERUSの解析はPerrinnのグラフと数値に一致し、検証は成功と判断しました。
もっとも、普段の解析の目的は開発上の改善点探しです。数値データに加え、動画・グラフ・ストリームライン・圧力プロットなどのポストプロセシングを駆使して、コンポーネントが車両周りの流れに与える影響を確認します。以下は、改善の余地を探る際に典型的に確認するビューの例です。




CFDは一見シンプルに見えますが、実態はまったく違います。準備不足のまま「実行ボタン」を押してしまうユーザーは少なくありません。解析のセットアップ・実行・分析には、ソフトウェアへの習熟だけでなく、流体力学と空気力学への確固たる理解が必要です。基本的な手計算で答えが妥当な範囲にあるか確認できることも忘れてはいけません。CFDが登場する以前、空気力学はすべて手計算で行われていたのですから。
最後に一言
CFDソフトを、フォーラムやアフターマーケット界雈でよく話題になるものに例えるなら、ダイナモ(シャシーダイナモメーター)が適当でしょう。「ダイナモは設定次第でどんな数値でも出せる」と言われますが、CFD解析も全く同じです。だからこそVERUSは正確なセットアップに全力を尽くします。FR-S/BRZの解析では、メーカー公表値と整合する出力になるよう時間をかけて確認したうえで、すべての入力条件を固定し、同一条件で改造後のケースを解析することで、同じ土俵での比較(apples to apples)を担保しています。
原文はこちら(VERUS公式ブログ・英語)でご覧いただけます。後年の風洞による検証は翻訳記事「VERUS風洞実験レポート」をご覧ください。
VERUS Engineering製品は、日本正規代理店RK-ONLINEで全製品お取り扱いしています。