【翻訳】プロ用CFDと簡易CFDは何が違うのか — 同じウィングを解析して比較
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今日では実に様々なCFDソフトウェアが利用できます。VERUS Engineeringは会社として、製品開発のために入手可能な最高のエンジニアリングツールに多くの時間と費用を投じており、創業当初からANSYSとOpenFOAMを使用しています。自動車分野のプロフェッショナル用CFDとしてはほかにSiemens Star CCM+があり、OEMやモータースポーツチームで広く使われています。プロ用CFDは精度よく解くために必要なパラメータをユーザーが指定できますが、簡易ソフトはそれができません。本記事は、VERUS公式ブログ「CFD Tools」(2019年4月18日/Eric Hazen and Paul Lucas)を、日本正規代理店RK-ONLINEが翻訳・編集したものです。

検証の概要
この記事でVERUSは、自社のコード長300mmリアウィングを、非プロフェッショナル用CFDソフトウェア(以下「NPCs」と略記)とANSYS Fluentの両方で解析し、結果を比較しました。このケースは車両丸ごとの解析に比べれば単純なものです。NPCs側の解析は、結果ができるだけ正確になるようVERUSがサポートしながら工学専攻の学生(インターン)が実施。ANSYS Fluent側は社内でセットアップ・実行しました。なお、VERUSのANSYS Fluent解析は風洞実測との相関が確認済みのため、解析セットアップの正確さは担保されています。

解析セットアップの違い
ANSYS Fluent
約300万セルのポリヘドラルメッシュにプリズム層20層を設定し、目標y+を1未満として粘性底層まで解像。乱流モデルはk-omega SST。ソルバーは倣精度の連成(coupled)ソルバーで、2次精度の空間離散化を使用。残差(連続の式、x・y・z速度、k、omega)を監視し、さらにドラッグ係数/ドラッグフォースとリフト係数/リフトフォースも監視しました。
NPCs(非プロ用CFD)の流体シミュレーション
NPCsでは、本格的なCFDソフトのような解析セットアップができません。境界層の捕捉に理想的なプリズム層を追加するオプションがなく、境界層の捕捉は力の計算に極めて重要です。乱流モデルも変更できず、自動車の外部空力には理想的でないLam-Bremhorst k-epsilonモデルに固定されます。ソルバーや離散化スキームの調整も不可。監視できるのは力のモニターのみで残差は見られないため、ソルバーが完全に収束したかどうか分かりません。こうした制約と不確実さのすべてが、精度と実測との相関を低下させます。
数値データの比較

データを見ると、NPCsは、実測との相関が確認されているANSYS Fluentと相関しませんでした。結局のところ、NPCsはウィングの性能をまったく捕らえられませんでした。車両全体のモデルと比べれば単純なケースであるにもかかわらず、です。ドラッグとダウンフォースの数値も、揚抗比(L/D)も、実際のウィング性能には近くありませんでした。
ポストプロセシング画像の食い違い
ウィング下面

ANSYS Fluentのケースでは後縁剥離(トレーリングエッジセパレーション)がはっきり確認できますが、NPCsのケースでは完全に欠落しています。これがNPCs解析の誤差の大きな要因だとVERUSは考えています。なお後縁剥離は性能不足を意味するものではありません。VERUSのウィングは独自開発の形状により、さらに高い迎角(AOA)でより大きなダウンフォースを発生できます。
エンドプレート外側

全体として、エンドプレート外側の流れは両解析間で相関しません。Fluentのケースはフロービズ(実車での気流可視化)テストとの一致が確認されているため、ここでもNPCsの不正確さが際立ちます。

- NPCsでは流れが真っすぐ後方へ向かうが、Fluentでは約45度の角度で下向き・後方へ向かう。
- 両ケースの相関が近かった唯一のエリア。この部分の圧力勾配が大きいため、予想された結果。
- NPCsの流れは不正確。実際の流れはもっと垂直方向で、Fluentとフロービズでは捕捉されているがNPCsにはない。
- NPCsはここも誤り。わずかに下向きなのに対し、Fluentでは約45〜50度下向き。
- もっと正確であってもよいはずのエリアだがNPCsは誤り。NPCsではわずかに下向きだが、実際の流れは約30度下向き。
- NPCs解析では第1ベントへの流れが表示されない。Fluent解析ではベントに流入する流れが確認できる。
- NPCsもベントへの多少の流入は示すがごくわずか。#6よりは正確だが、流体の挙動を正しく表現できていない。
- NPCsはエンドプレート前縁の剥離をFluentのように捕捉できない。
エンドプレート内側

- NPCsの流れは不正確。後方への流れを示すが、実際は上向き。
- NPCsは比較的近いが、Fluentのようには流れを表現できていない。実際の流れはNPCsの可視化より上向き。
- NPCsが大幅に外れている箇所。矢印は流れが付着してウィングに沿って流れているように見えるが、実際には剥離した流れが逆方向に進んでいる。
- ここも大きく外れている。NPCsは付着流を示すが、実際にはエンドプレート付近で剥離し、一部逆流もある。
- このエリアはかなり近く、誤差があるとすれば矢印の密度によるものだろう。
結論
性能部品の設計において、設計判断がCFDデータに基づくのであれば、最善の選択をするために正確で現実に即した解析が不可欠です。もしVERUSが非プロ用CFDで開発していたら、誤ったデータと画像に導かれ、エンドプレートやウィングプロファイル全体の設計は大幅に違っていた可能性があります。プロ用CFDツールは、簡易ツールにはできない必要なシミュレーション条件の指定を可能にします。シンプルなウィング解析ですら、ケース間の小さな違いが、ポストプロセシング画像と実際の性能の両面で大きく異なる解析結果につながるのです。
原文はこちら(VERUS公式ブログ・英語)でご覧いただけます。風洞実測との検証については翻訳記事「VERUS風洞実験レポート」をご覧ください。
VERUS Engineering製品は、日本正規代理店RK-ONLINEで全製品お取り扱いしています。